普段からなんとなくいつも頭が重い、痛い、頭がすっきりせず頭重、頭痛に悩まされてる方、頻繁に鎮痛薬を服薬されている方は多いのではないでしょうか。
未病と言われる頭痛症状は 自分でもなかなか気づかない日々の癖が大きな影響を与えているのかもしれません。その中でも無意識にしてしまう食いしばりは想像以上に体に負荷を与えていて、頭痛以外にも様々な悪影響をもたらします。
そこで今回は、食いしばりによっておこる頭痛、その他の症状の改善方法について解説します。ぜひ参考にしてください。
この記事のポイント
- 食いしばりによる体への悪影響
- 自分でできる!食いしばりケア
- 歯科医院での治療法
歯の食いしばりとは?
食いしばりとは、無意識のうちに歯をかみしめてしまう癖です。
本来の理想は、上の歯と下の歯には隙間があり食事以外では接触しないことが理想です。ですが何かに集中している時や寝ているときの無意識での食いしばりの力は想像以上に強く
さまざまな影響を及ぼしています。
近年では、強い力で食いしばるのではなく、日中弱い力で常時上下の歯を接触している状態が長時間つづけることで、口周りの筋肉痛や顎関節の痛みにつながってしまう歯牙接触癖をもった方が多いです。
そのほとんどが、自分では気づかず、なにか症状がでてきて初めて自覚することが多いです。
◆食いしばりセルフチェック
自分が食いしばりの癖があるかチェックしてみましょう!
⬜︎ 偏頭痛や頭痛の検査では異常はないが慢性的に頭が痛い、重い
⬜︎ 唇を閉じたときに上下の歯がかみ合う(当たる)
⬜︎ 肩こり、首こりが慢性的にある
⬜︎ 朝起きると頬や首、こめかみがだるい
⬜︎ 耳鳴りやめまいが日常的にある
⬜︎ 舌の脇や頬の内側に歯のあとがある
⬜︎ エラが張った頬の形または下の顎のラインが床に平行
⬜︎ 頬が張ってくっきりと溝のようなほうれい線が目立つ
⬜︎ 顔がこわばる、お口の周りの動きが悪い
⬜︎ 歯の山の部分や先端が磨り減って平らになっている
⬜︎ 歯ぎしりやいびきの自覚がある、または指摘されたことがある
これらは食いしばりに見られる主な症状です。一つでも該当するものがあれば、食いしばりをしている可能性があります。
食いしばりの原因は?
食いしばりは無意識にしてしまうことが多く、精神面とかかわりがあるといわれています。
ストレス
ストレスの定義は様々な見解がありますが心の興奮や緊張(ストレス)は身体を興奮させる交感神経を過度に働かせ、筋肉を緊張させます。
とくに顔周りには細かい筋肉があるため、食いしばりを引き起こすと全身の緊張へとつながり、さまざまな筋肉に負荷をかけてしまいます。
緊張や集中
何かに集中しているとき(デスクワ-ク、運転、テレビ、ゲ-ム、スマホなど)に行われる癖としてあげられます。
ただ強い力で食いしばることだけではなく、日中弱い力で常時上下の歯を接触している状態が長時間つづけることでも、口周りの筋肉痛や顎関節の痛みにつながってしまいます。
それを歯牙接触癖(TCH)といい、悪習癖の一つですが無自覚な方が圧倒的に多いです。
自分の癖を知ることが最初の対策だといえます。
食いしばりと偏頭痛の関係は?
頭痛は命に関わる病が原因になっている可能性もある為、決して自己判断はせずに、頭痛外来などの専門医で原因を診てもらうことが重要です。
その原因は様々で予防や対策を間違えてしまうと、生命に関わることもあるので「頭痛くらい・・・」と思わず、一度しっかり専門医に診てもらうことをおすすめいたします。
ここでは特に異常もなく、いわゆる未病という症状の中の頭痛と食いしばりの関係についてお話させていただきます。
食いしばりで頭痛が起こる原因
食いしばりの状態では、噛む筋肉の負担はもちろんのこと、そこにつながっている筋肉まで負担がかかり色々な症状を引き起こします。
1日のうちに歯が噛み合わさる時間は食事なども含め、平均20分といわれておりそれ以外は安静位空隙といって上下の歯は僅かに浮いているのが正常です。
特に夜の就寝時の食いしばりは、力のコントロ-ルも出来ない状況で噛んでいるので相当な負担がかかっています。食いしばりによって噛む筋肉は絶えず力が入っている状態です。
例えると思いっきり腕に力こぶを作ってみてください。
力を入れた状態で少し時間がたつとだんだん疲れて痛くなりますよね?食いしばりは、口腔周囲筋が常にこのような状態なので、これに関係する筋肉にも当然負担がかかります。
こめかみにある側頭筋は噛みしめるときに使う筋肉ですが 食いしばりの負担がかかりすぎると頭痛を引き起こしますことが分かっています。
その他、食いしばりによる口腔や体への悪影響は?
歯への影響
強い力で絶えず食いしばっていると筋肉だけではなく、歯や周りの組織にも負担がかかります。
絶えず強い負担がかかっている分、歯周病リスクは高くなり、歯周病は進行しやすくなります。
また力によって最悪な場合、歯が破折してしまい抜歯せざるを得なくなる場合があります。
歯がしみる知覚過敏、歯肉がさがる
歯は上下からの力ではなく食事の際の食いちぎる、噛む、すり合わせるなど色々な動きからの力がかかります。また歯並びや歯軋りなどでも、色々な方向からも力が加わります。
そのため歯がすり減ってしまったり(咬耗)や歯にヒビが入ったり(クラック)することで、
歯の根元が削れて知覚過敏をおこします。
それに付随して、いつも同じ方向に力がかかっていると歯茎も痩せてきます。
歯のすり減り(咬耗) |
歯のヒビ(クラック) |
歯の根元の欠損(WSD) |
歯肉の痩せ、退縮 |
噛むと痛みを感じる
歯の根は、噛む力などが直接頭の骨に響かないようにクッションの役割をもつ歯根膜で覆われています。
噛む力が強く、食いしばりなどで過剰に力がかかっているとその歯根膜に炎症がおき、噛むと痛むなどの症状が出てきます。(咬合性外傷)
歯根膜の部分をイラストで表す?
詰め物やかぶせものが割れる
歯と同じく、つめたものや、かぶせ物にも負担がかかるので取れやすくなったり割れやすくなります。
最近ではつめもの、かぶせ物にも色々な種類がありますので、歯科医院できちんと相談し、歯にかかる負担を考えたかぶせものを入れることもひとつです。
顎が痛む顎関節症(がくかんせつしょう)
顎を動かす筋肉が常に緊張状態であると、正常な顎の動きが出来なくなり、顎の関節に異常をきたします。
顎関節症は、様々な原因が重なり症状がでますが、その中でも食いしばりは大きな原因の1つと言われています。
また上下の歯が普段から接触している歯牙接触癖(TCH)も口を閉じることで顎の筋肉が引っ張られる状態なので顎関節にも悪影響を及ぼします。
食いしばりで拘縮した筋肉を緩和するマッサ-ジやストレッチなども関節の炎症の症状がでる手前の予防策としてはとても有効です。
肩こり
噛む筋肉(頬)につながっている首の筋肉や、それにつながる肩の筋肉にも負担がかかり肩こり、首こりの原因の1つになるといわれます。
朝起きたときに肩が凝っている、首がこっているなどの症状がある方は、食いしばりを原因の1つとして考えてもいいかもしれません。
食いしばりは、肩こり、首こり、頭痛、頭重、顎の関節痛などの症状の原因の一つになっていると考えられています。
顔が大きくなる(エラがはる)むくむ、ほうれい線が目立つ
咬む筋肉は頬にあります。
食いしばりで絶えず咬んでいる状態は常に筋肉が硬縮し筋肉は発達し、エラが張った状態になります。
その筋肉が老廃物を流す血管やリンパ感を圧迫し、血液の流れが悪くなり顔がむくんだり頭が重くすっきりしない感じが続きます。
そのためほうれい線が深く刻まれ、血色が悪く顔色も悪く見える原因でもあります。
自宅で出来る食いしばりを治す方法
食いしばりを意識する
食いしばりに気づくように、たとえば職場のパソコン、自宅の冷蔵庫などに「くいしばりしてない?」などを書いたメモを張ることは認知行動療法といって非常に有効です。
実際に、このような提案を行い、食いしばりが軽減しています。
舌スポットを意識する
舌を上あごにあるスポットという位置に置いておくと、歯をグッとかみ合わせなくなるので昼間の食いしばりを防止する効果があります。
また、トイレに行ったら深く深呼吸をする、お口のストレッチをする、など日々必ず行う行動にワンアクションを付け加えるのもおすすめです。
ストレスを発散する
筋肉と心は、深く関係していると言われています。
特に、食いしばりはストレスと大きく関係しているので、自分なりのストレス発散方法を見つけるのもいいでしょう。
ゆっくりお風呂に入る、ヨガの呼吸方法をとりいれる、好きな音楽をゆっくり聴くなど
心を落ち着かせ、副交感神経をうまく働かせる自分なりのリラックス方法をみつけるのもよいでしょう。
生活リズムを整える
少し早起きをして、1日の始まりに軽いストレッチをするのは気持ちがよく全身の血流がよくなります。気持ちに余裕を持つことは、ストレスから自分をラクにさせる方法の1つです。
自分なりの心地よい1日の流れに変えてみることで生活リズムも整い、ストレス解消にも有効でしょう。
枕の高さを変えてみる
枕の高さは、食いしばりや顎関節症に大きく影響します。
高価な枕でも、自分の体や骨格にあっていなければ効果が期待できません。
また、低反発などの硬い枕は寝返りが打ちやすくなってしまうので、食いしばりや顎関節症の方には向かないと言われています。
高さが高い枕は、顎が下がってしまい食いしばりをしやすい顎の状態になるので3つ折のバスタオルなどで自分にあった高さを知ることや、枕の専門店で自分にあった枕を作ることで、さまざまな症状が軽減することも期待できます。
口腔周囲筋のケア
自分で簡単に行えるマッサ-ジを試してみることで筋肉を緩めてみましょう。
ストレス発散、食いしばりや頭痛が軽減することが期待できます。
歯科医院で行う食いしばりの治療法は?
食いしばりに伴うお口の中の影響に対し、歯科でも色々な治療や対策方法があります。
対処療法はもちろん、ご自分の食いしばりの原因にアプロ-チした治療法を提案してもらいましょう
その際、どこが痛むか何をしたら痛くなったか、どんな時に痛むか、いつから痛むか、ほかの症状(肩こり、首こり、頭痛 など)を詳しく問診し、治療の計画を立てていきます。
食いしばりを専門で治療している歯科医院もあります。かかりつけ医に相談してみましょう。
マウスピース
就寝時は食いしばりをコントロールすることができないため歯へのダメージを予防するため、マウスピースを作成し予防する方法があります。形は歯科医院によってさまざまなので、歯科医とよく相談することが大切です。費用も保険適用のものから自費診療まであります。
ただ歯を守るためのマウスピ-スですが、気になってギリギリと咬んでしまい、筋肉に対する影響がひどくなる場合もありますのできちんとした問診とアフタ-ケアを行うことも重要になります。
歯科衛生士による口腔周囲筋のケア
口腔周囲筋ケア専門の歯科衛生士にケアをしてもらうのもお勧めします。
口腔内を熟知している専門歯科衛生士に定期的にお口の中からと外からマッサ–ジケアをしてもらうのと同時に筋肉や関節の状況、お口の中のチェックをしてもらうのも予防につながります。
そのままにしておくと危険!!
口周りの筋肉の緊張が及ぼす影響は、思っているよりも将来的に大きなリスクになることが言われています。なんとなく不快、なんとなく痛い、重い、歯の症状(虫歯ではないが いつも同じところが痛む、しみる、つめたものが取れる)などがあげられます。
少しの気になる症状でも、将来歯を失ってしまう可能性や慢性の肩こり、顎関節症、頭痛、耳鳴り、めまいなど口の中にとどまらず全身にも大きなリスクや影響が考えられますので、気になる方は、ぜひかかりつけの歯科医院で相談してみてください。
まとめ
頭痛も食いしばりの癖も、心の状況(ストレス)と深くかかわっています。
症状改善や食いしばりの癖を直そうと一生懸命に頑張ってやろうとするその気持ちが、かえってストレスになり食いしばりがひどくなってしまう患者様も多くみられます。
自分の食いしばりの症状やそのリスクをきちんと把握することと、その癖とうまく付き合っていくという考え方も心の状態と深く関係している癖だからこその、1つの対処法だと思います。
まずは自分の症状に気づき、専門医への受診、かかりつけの歯科医院へ相談して自分の症状にあった適切な治療とケア方法を組み合わせて、心も体も健康でいたいですね。