妊娠して体が少しずつ変化していくなか、お口のトラブルに悩まされる方も多いのではなでしょうか。
妊娠によって女性ホルモンが増えることで、口の中の状態は大きく変化します。歯とお口のトラブルには特徴的なものがいくつかあります。
ここでは、妊娠中の歯のトラブルとその対処法を紹介しますので参考にしてみてください。
うまれてくる赤ちゃんのためにも、まずはお母さんのお口のトラブルをなくし、不安なく、安心して、出産できる環境をつくりましょう。
この記事のポイント
- 妊娠中によくあるお口のトラブル
- 赤ちゃんのために出産前に出来ること
- 妊娠中、赤ちゃんの歯を育てるために出来ること
妊娠中によくあるお口のトラブル
お口の乾燥
妊娠初期は、ホルモンバランスの影響で唾液がでにくくなることがあります。
お口の中が乾燥していると、唾液で汚れを洗い流すことができず、汚れがたまりやすくなってしまい、虫歯や歯周病の原因になると言われています。
こまめに水分を摂る等、お口の中をできるだけ保湿していることが大切です。
唾液つわり
唾液に関係するもので妊娠期に起こる症状に「唾液つわり」があります。
泡状の唾液になり、飲み込むと気持ち悪くてティッシュなどに吐き出している妊婦さんも多いのではないでしょうか。
唾液を頻繁に吐き出すことが続けると、それもまたお口の中を乾燥状態にしてしまいます。
唾液つわりは長い人で妊娠後期まで続くと言われていて、唾液を飲み込めない状態はとても辛いです。
唾液つわりに伴う、お口の乾燥状態に関しても、自分にあった対処方法で守りましょう。
対処方法
・お口が乾燥していると思ったら水分を取りましょう。
・飴やガム、タブレットで唾液がでる環境を作りましょう。
・唾液つわりの人は、自分にあった方法を試してみてください。
※この時、砂糖の含まれている食品を選ぶとかえって虫歯になるリスクを高めてしまいますので、代用甘味料のものを選ぶと良いでしょう。
代用甘味料(キシリトール)製品
虫歯の原因になるミュータンス菌は糖から歯を溶かす酸を代謝します。ですがキシリトールは同じ糖でも酸産性能がないためリスクが低くなります。また噛むことで唾液を出して自浄作用効果も期待できます。歯科専用のものがキシリトール100%なので、おすすめです。
販売:ロッテ
商品:歯科専用 キシリトール100%使用 シュガーレス・ガム
参考価格:1,127円
虫歯
妊娠中は、食事の内容が偏ることや回数が増えること、つわりや、お口の乾燥、酸性食品摂取など様々な要因で虫歯になりやすいです。
食事回数は増えるけれど、つわりで歯磨きはなかなかできないこの状態が続くと、お口の中に汚れがたまった状態が続きますので、虫歯のリスクが高くなると言われています。
お口が乾燥していると、さらに虫歯になりやすいので、妊娠中は普段よりも意識して歯磨きをすることが大切です。
【対処方法】
・外食の時も歯ブラシを持参し、できるだけ歯磨きをする習慣をつける
・つわりで歯磨きが辛い人は、歯磨き粉をつけないで磨いてみる
・普段よりも小さめの歯ブラシを使ってみる
・無理のないブラッシング方法を指導してもらう
妊婦の虫歯については【妊婦は虫歯になりやすい!その原因と予防法、治療について】をご覧ください。
歯周病
虫歯同様にお口の中に汚れがたまった状態が続くと、歯肉の周りにも汚れがたまりますので、歯周病の原因にもなります。
また妊娠中や産後は女性ホルモンのバランスが乱れてしまいます。なかでも「エストロゲン」「プロゲステロン」を好む歯周病菌がいるため、リスクがあがってしまいます。
特に妊娠中は体温が高いため、虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすく、炎症を起こしやすいと言われています。
お口が乾燥していると、前歯に炎症がでやすく、歯肉から出血することもあります。
歯磨きをしていて歯肉から血がでるようになったら、虫歯よりも歯周病の症状がでています。
妊娠性歯肉炎(エプーリス)
妊娠中にみられる歯肉炎で歯肉が大きく膨らむ症状がでることがあり、ホルモンバランスが影響していることが原因といわれています。
出産後に自然に治ることがほとんどですので、そのままにしておき、清潔な状態を保ちましょう。
出産後に歯肉の膨らみがとれない場合は、手術で歯肉を切除することもあります。
妊娠中はできるだけ手術を控え、清潔な状態を保つことを心がけます。
虫歯ではない歯の痛み
妊娠中は体温やホルモンバランスの変化によって、歯の神経部分に圧がかかり痛みがでることがあります。
圧迫されたような痛みで歯の根っこのあたりがずきずきとうずくよう症状です。
妊娠5ヶ月くらいになると自然に治ると言われています。
【対処方法】
痛みに耐えられず、眠れない状態が続くようであれば、すぐに歯科医院に相談する
必要ならば、妊娠期に合った処置を行い、痛みを軽減することができます
自分で対処するのが不安な方は担当医や専門家に相談する
※定期的な検診は、妊娠初期からでも受診することができます。
最近では「マタニティ歯科外来」なども設置されていて、妊婦さん専門の歯科医院もあります。
赤ちゃんのために!出産前にできること
早めに歯科治療をしておく
虫歯や歯周病の治療など出産前にしておいた方がいいとは聞いたことがあるけど、なぜ必要なのか?一つずつ解消していきましょう。
虫歯の治療
赤ちゃんへの虫歯菌の感染のリスクを下げるために出産前にできることは、妊婦さん自身や他のご家族の方の虫歯菌をなるべく減らすことです。
生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には虫歯菌はいません。つまり出産後何らかの原因で感染するのです。
特に妊婦さんはホルモンバランスの乱れや食生活の変化などより虫歯菌が増えやすく虫歯になりやすい環境になっています。
実際に虫歯がある場合は治療できるときにしっかり治療する必要があります。
歯周病の治療
歯周病の妊婦さんは、歯周病ではない妊婦さんと比較すると、約7倍も早産や低体重児出産のリスクがあるといわれています。
歯周病になると炎症性のサイトカインが生成されます。このサイトカインには子宮収縮物質の産生を促進させる作用があることが調べられており、まだ出産の時期ではないのに子宮収縮がおきやすくなるため早産になることが関連しているのではないかと、研究がすすんでいます。
また歯周病菌が直接血流にのって胎盤へ移行すると発育不全や低体重児出産などを引き起こす可能性についても研究がすすんでいます。
虫歯菌と同様に生まれたばかりの赤ちゃんのお口のなかには歯周病菌も存在しません。
妊婦さんや出産を考えている方も歯周病と指摘されたことのある方はしっかりと治療しましょう。
セルフケアを徹底する
虫歯菌や歯周病菌のリスクを減らすにあたって一番効果的なことはセルフケア(ブラッシング)を徹底することです。
歯の表面に付着しているプラーク(歯垢)は食べかすではなく細菌の塊です。つまりプラークをしっかり除去できるようになると虫歯菌も歯周病菌も数が減り、その分リスクを下げることができるというわけです。
磨いているつもりだけど虫歯がどんどんできる、歯周病がなかなか改善しないという方は歯科衛生士によるブラッシング指導を受けてみるとよいでしょう。
かかりつけ歯科医院を見つけておきましょう
妊娠中に限らず何かあった時に相談できる「かかりつけ歯科医院」を見つけておきましょう。
かかりつけ歯科医院を持つことのメリット
妊娠中の疑問を相談できる
妊娠中にこれはしてもいいの?治療はいつからできるの?など不安な事や疑問もたくさんあると思います。そういった不安や疑問をしっかり相談できるかかりつけ歯科医院をみつけ、気軽に相談できる環境づくりをしましょう。
出産後も相談できる
出産後もご自身のことや赤ちゃんのことなど不安がいろいろあるかと思います。
出産後はなかなかご自身のセルフケアに時間をかけることが難しくなる場合が多くなり赤ちゃん中心の生活になりますので、ライフスタイルの変化に合わせた歯科治療の計画やセルフケアの相談もできます。
妊娠中でも赤ちゃんの歯を育てるための食事を心掛ける
赤ちゃんの歯の形成や発育に必要な栄養素は様々なものがあります。
妊娠中はつわりがあったり食生活の変化があったりと、食事バランスが崩れやすい時期です。できるだけバランスの取れた食事を摂りましょう。
たんぱく質、カルシウム、リン、ビタミン類を十分摂取することを心がけましょう。
赤ちゃんの歯は生まれてからできるのではなく、お腹の中にいるときから歯の形成が始まっています。
妊娠7週目には歯胚(歯の芽)ができ始め、出産時には乳歯が形成され永久歯の歯胚(歯の芽)もできている状態になっています。
まとめ
妊娠中やそろそろ妊娠を計画している方、その期間に赤ちゃんのためにできることは何かないかな?と思われている方がたくさんいらっしゃると思います。
虫歯、歯周病などの歯科治療をできるだけしておくこと、かかりつけ歯科医院を探しておくこと、妊娠中のママと赤ちゃんの歯の関係を知ることなど出産前にできることはいくつかあります。なかなか出産すると外出もなかなか時間が取れないこともありますし、赤ちゃんのためだけではなくご自身の健康を守るきっかけにもなります。
ぜひこの機会にかかりつけ歯科医院をみつけ安心して信頼できる担当歯科医師・歯科衛生士を探し、お口の中だけに限らず全身の健康づくりのサポートをしてもらいましょう。