奥歯のかぶせ物やブリッジの治療などでジルコニアにしようか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
ジルコニアという素材はセラミック(陶器)の中で最も耐久性や強度、審美性にも優れていて、最近では奥歯の被せ物(クラウン)に多く使われます。
またそれ以外にも、差し歯、ブリッジ、インプラントなどのオールセラミック治療に適しています。
今回は、ジルコニアセラミックのメリット・デメリットや費用の相場について解説します。ぜひ、参考にしてください。
この記事のポイント
- ジルコニアとはなにかがわかる
- ジルコニアセラミックのメリット・デメリットがわかる
- ジルコニア素材で行う治療がわかる
ジルコニアとは
ジルコニアは二酸化ジルコウムのことで、人工ダイヤモンドと呼ばれているものです。金属のジルコニウムと酸素で構成されセラミックの一種です。色は白または透明であり金属と同程度以上の硬さを持ち、「白い金属」呼ばれる素材です。
細かな結晶からなる結晶体からなり、高強度、高靱性を有し、金属に変わる歯科治療材料として近年では多く利用されています。
ジルコニアセラミックのメリット
現在の歯科材料の中で一番強固
「ジルコニア」は金属の酸化物ですが、それを人工的に結晶化したものは「キュービックジルコニア」と呼ばれています。ジルコニアの硬さは金属より高い1000MPa以上の強度と言われ、歯の硬さより3倍以上と言われています。
金属アレルギーを起こさない
金属ではないため、生体親和性をもち、安全性も高く、耐熱性にも優れて金属アレルギーの方にも安心して使用できる素材です。近年はインプラントでも使用されています。
一般工業界でも広く使われていて、人工関節や調理器具にも使われ丈夫で安全です。
歯肉状態を健全状態に保つことができる
金属を使用した歯の補綴物(被せ物の冠)は金属イオン溶出により、マージン部(冠の際の歯肉部)が黒く変色してしまったり、黒くみえることがあります。
ジルコニアの補綴物は金属イオンの溶出がないため、マージン部が黒く見えることがなく、歯肉を健全状態に保つことができます。
金属より軽く生体に優しい
ジルコニアは金属の約1/3の重さであり、本数の多いブリッジで使用するとほどんと重さを感じることがなく、かみ合わせのバランスを崩したりするリスクが軽減できる。
ジルコニアセラミックのデメリット
費用が高く、作製に少し時間がかかる
保険適応ではなく、自費診療となります。費用は他のセラミック治療に比べ1.5~3割ほど高くなります。
歯科技工士さんにとっても作製に時間がかかると言われ、硬いため調整するのが難しいと言われています。
歯科医師・歯科技工士の技術で適合・寿命が左右される
CAD(コンピューター支援設計)とCAM(コンピューター支援製造)の技術を用いたCAD/CAMシステムで作製します。
歯科医師の技術に左右されることや適合を高めるため歯を削る量が比較的多いため、寿命に差が出ることがあります。
天然の歯より硬く、従来のセラミックより透明感が劣る
オールジルコニアは硬すぎるため、咬み合う相手の天然歯やジルコニア以外の補綴物が負けて摩耗したり、欠けたりしてしまいます。
またジルコニア自体は従来のセラミックに比べ、透明感が劣り、審美性に欠けます。そのためジルコニアフレームにセラミックを焼き付けたものが使われることが多いです。
ジルコニア素材で行う治療
ジルコニアクラウン
金属を使わずにジルコニアフレームにセラミックを焼きつけたものです。
生体親和性があり、歯肉を健全状態に保つことができ、歯肉退縮に伴って歯ぐきが黒く見えることを防ぐことができます。
ジルコニアブリッジ
ジルコニアで作製するブリッジは強度や耐久性に強く、ブリッジのフレームに適しています。
また金属に比べ重さが軽く、生体にも優しい素材です。
ジルコニアアバットメント(インプラントの土台)
前歯のインプラントの土台で用いられ、衛生面や生体親和性に優れています。歯ぐきが黒く透けたりする事も少なく、セラミック冠と同様に透明感や審美性を維持することができます。
インレー、ラミネートベニアなどには不向き
一部出来るものもありますが、審美的に劣ります。硬すぎてかみ合わせの調整や除去することが困難といわれます。
他の素材との比較
費用 | 強度 | 審美性 | 安全性 | |
ジルコニア | 13~18万位 | ◎ | ◎ | ◎ |
e-max | 10~15万位 | ○ | ◎ | ◎ |
メタルボンド | 13~2万位 | ◎ | ○ | ○ |
ハイブリッド前装冠 | 7~10万位 | △ | △ | △ |
金属(保険) | 保険適応 | ○ | × | △ |
ジルコニアセラミック治療の注意点
オールジルコニアは硬すぎる
ジルコニアのみのオールジルコニアは天然歯に比べ硬すぎるため、対合する天然歯やジルコニア以外の補綴物が負けてしまい摩耗したり、欠けたりして負けてしまうことがあります。
オールジルコニアは審美性・親和性に欠ける
ジルコニアのみのオールジルコニアはジルコニアフレームにセラミックを焼き付けたものに比べ、審美性・親和性に欠けます。また硬すぎるため調整が困難と言われています。
ジルコニアの素材に歯科医師、歯科技工士の技術が不可欠
ジルコニアの適合・精度・寿命を高めるためには、歯科医師の精密な形成、歯科技工士の精密な技工操作が必要です。
ジルコニアの寿命を左右するもの
歯ぎしりや食いしばりが強い人はジルコニアが欠けるリスクが高くなります。また、歯周病など口腔内環境が悪い人はジルコニアの寿命が短い可能性があります。
寿命を延ばすためにはジルコニアをセットした後のメンテナンスは必要不可欠です。
歯ぎしり、食いしばりが強い人には寿命を延ばすためにマウスピースを使用することもあります。
マウスピースに関してはこちらの記事もご参照下さい
【無意識の歯ぎしりで歯がボロボロに!マウスピースで歯を守る】
まとめ
昨今、金属の高騰、また金属による身体への悪影響が明るみに出ています。審美性や強度、身体への安全性のあるジルコニアは今後も活躍すると思います。
被せ物やブリッジを入れる場合はまず第一の選択肢としてご検討下さい。