無意識にしてしまう歯ぎしりに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
寝ている時の歯ぎしりは無意識にしてしまうものですので、意識的に自分で止めることは不可能です。また、自分では気付いていない場合や家族に指摘されて気付くという場合も多いと言われています。
歯ぎしりを長く続けていると歯がすり減ったり、削れたり、割れてしまったり、動いてきたりと口の中でまず何かの症状が起こってきます。
それにより、顎のズレや肩こり、偏頭痛など全身に様々な悪影響を及ぼすこともあります。
今回は、歯ぎしりを減らして歯や歯ぐきを守るマウスピース治療をご紹介いたします。
歯ぎしりで悩まれている方はぜひ参考にしてください。
この記事のポイント
- 歯ぎしりについて詳しくわかる
- 歯ぎしりが及ぼす影響がわかる
- 歯ぎしり治療の費用についてがわかる
歯ぎしりとは
主に寝ている間に上下の歯の接触で起こるもので、一定以上の強さや回数により、さまざまな症状がでているものです。ブラキシズム(口腔内悪習慣)とも呼ばれます。
歯ぎしりの種類
グランディング
上下の歯を「ギリギリ」と横に擦り合わせるタイプのもので、歯ぎしりの中で最もよく見られるものです。
クレンチング
上下の歯を歯をずらさずに強く噛みしめる無意識のくいしばりです。
日中無意識に歯を食いしばっているときはこのクレンチングが多いです。
グランディングと違い音が出ないので、ご自身や家族の方にも気が付きにくいものです。
タッピング
上下の歯を「カチカチ」と打ち鳴らすタイプの歯ぎしりで、あまり見られないものですが、ストレスや癖によるもので無意識に行われます。また似たようなもので「シバリング」といわれ、寒い時など顎がガクガク震えてしまうものは意識がある時におこなわれます。
歯ぎしりの原因
詳しくは解明されていないが、遺伝的なもの、ストレスによるもの、飲食、喫煙、カフェイン、薬剤の副作用など睡眠を浅くする要因によるものではないかと考えられています。
ストレスによるもの
現代社会はストレス社会と言われており、ストレスなく生活することは難しい時代です。
歯ぎしりを起こしてしまう人は日頃うまくストレスを発散させることができず、溜め込んだストレスを睡眠中に発散させるために歯ぎしりをしてしまうと言われています。
また、環境の変化や慢性的な疲労、性格的に真面目な方や責任感が強い方も歯ぎしりの要因と考えられています。
浅い睡眠
ぐっすり眠れる深い睡眠の時には筋肉の動きは抑制されます。
しかし、浅い睡眠時には抑制がとけ、無意識に咬筋に力がかかってしまい、歯ぎしりが起こると言われています。
飲酒、喫煙、カフェイン、睡眠薬などは睡眠を浅くする要因とされていますし、睡眠時無呼吸症候群などもその一つです。
歯列接触癖 TCH(Tooth Contacting Habit)
上下の歯を持続的に接触させる癖のことです。歯ぎしりや食いしばりとは異なり、無意識の状態で歯と歯が触れている状態です。TCHを止める最も効果的な方法は、唇を閉じて歯を離す事を意識することです。 唇を閉じて、上下の歯を離し、顔の筋肉の力を抜くことを意識的することで改善します。
通常、日中は上下の歯が接触する時間は20分前後と言われています。
摂食時にも実際には食べ物が介在しているので、歯と歯は接触していません。普段は安静位空隙といって、本来何もしていない時は上下の歯の間には1~3㎜ほどの隙間があるものです。
セルフチェックの例
歯ぎしりは自覚症状が少なく、家族やパートナーなどから指摘されるケースが多いです。
そこで次にご自身でチェックすることのできる項目をいくつか挙げてみますので、参考にしてみて下さい。
一つでもあれば歯ぎしりをしているのかもしれません。
1.起床時、顎が疲れている、だるい
2.肩凝り、偏頭痛が多い
3.歯にひびがある。すり減っている。犬歯(糸切り歯)がとがっておらず、丸まっている
4.口を閉じてリラックスした状態で上下の奥歯がくっつく
5.パソコン、ゴルフなど集中している時に無意識に咬みしめている
6.顎や舌に咬んだ痕、線(圧痕)がついている
7.歯がしみやすく、知覚過敏がある
8.下の顎の内側に骨の出っ張り(骨隆起)がある
歯ぎしりが及ぼす影響
睡眠中の歯ぎしりの際の咬む力は、無意識の状態なので抑制がきかず、約50㎏以上の力がかかっていると言われています。日中意識して思い切り咬みしめた力は強くても30㎏ほどといわれますので、いかに咬む力が強いかがわかります。また睡眠中は持続的に約15分以上の強い歯ぎしりをしているとも言われています。歯ぎしりが及ぼす影響を挙げてみました。
歯がすりへる、削れる、欠ける、歯の根が割れる
歯ぎしりにより歯と歯が強く接触しこすれてしまうため、症状として知覚過敏や咬むと痛いという症状が現れます。
ほおっておくことで、歯の神経や歯を失うことにもなりかねません。
インプラント、セラミックが欠ける。被せ物、詰め物も。
せっかく高い費用をかけ入れた補綴物の寿命を短くすることになりかねます。あらゆる被せ物や詰め物も欠けたり、穴が開いてしまったり、すり減ったりします。
インプラントは咬む力が直接顎の骨に伝わってしまうため、インプラントの周りの骨にダメージを与えてしまいます。またセラミックも強い力により、欠けてきます。
歯がゆらされることにより、歯肉のやせ、歯周病になる
歯がゆらされ、咬み合わせが悪化すると「咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)」と呼ばれる歯周病の症状が現れます。咬合性外傷とは強い力が歯にかかってしまい、歯を支えている歯ぐきや骨がダメージをうけることです。その結果、歯の支えが減ることで歯周病が進行していきます。
咬み合わせが悪くなる、咀嚼効率の低下
歯ぎしりにより、上下の歯がすり減ることで咬み合わせの変化が起こり、また歯が揺らされることで歯並びが悪くなることもあります。
その結果、食べ物が食べにくくなってしまいます。
顎が痛くなる、口が開きにくくなる
歯ぎしりにより顎関節に負担が大きくなり、いわゆる顎関節症状になることもあります。
これにより起床時の筋肉の痛み、疲労、そして肩凝り、頭痛、腰痛などにもつながります。
顎の筋肉に負担がかかって、こりが起こることもあります。
咬筋が発達してエラが張る
過度の咬む力により、咬筋が鍛えられ、発達してエラが張るようになります。咬筋は食べ物を咬むときに使われる筋肉の中で強い筋肉です。また、下の歯の内側の骨が出っ張り(下顎隆起)によって、もともとの舌のスペースが小さくなったり、舌での違和感が出たりもします。
マウスピースの効果
歯ぎしり予防のため、樹脂製のマウスピースを使用することにより、悪影響を防ぎます。
通常は上の歯列、顎にかかる圧力を低減し予防をしてくれます。
歯ぎしりをする睡眠中に装着をするのが基本ですが、日中も咬みしめる癖のある方、スポーツ時などにも装着すると良いでしょう。
費用について
基本的には保険適応で、約5,000~7,000円ぐらいです。
「歯ぎしり」という病名がつくため保険適応となります
マウスピースは保険適応で作成ができます。ただし、破損・紛失により新しく作成する場合には6ヶ月経過しないと保険適応外になりますので、注意してください。
また、スポーツ用や矯正、インプラントなど自費の補綴物の保護のためのマウスピースは自費になることもあります。
市販のマウスピース
最近では歯科医院に行かなくても店頭や通販でマウスピースの購入もできるようになりました。
歯科医院で作成するよりも安価で手軽に作製できますが、簡易的なものが多く、歯や顎の大きさにしっかりフィットせず、効果が出ないばかりか歯並びの悪化など逆効果の場合もありますので注意が必要です。
マウスピース以外の治療法
歯列矯正、咬み合わせの調整
歯並びが悪いことにより歯ぎしりをしてしまったり、また歯ぎしりによって歯並びが悪くなることもあります。そのため歯列矯正をすることで改善するケースもあります。
また、詰め物、被せ物などによる咬み合わせのバランスの悪さは歯ぎしりの原因となることもあります。
歯科医院にて咬み合わせの調整をすることも効果的です。
エラが張った咬筋には咬筋ボツリヌス注射
咬みしめ、咬筋の肥大がある場合には咬筋ボツリヌス注射により、咬合力の減弱をはかることもできます。効果の持続期間は約6~10か月となります。
咬筋ボツリヌス注射をすることで、咬みしめが気にならなくなり、顎も疲れにくくなります。
睡眠時無呼吸症候群の治療
歯ぎしりの原因とされるストレス、浅い睡眠をなくすため睡眠時無呼吸症候群の治療も効果的です。全身の健康にもつながり、これにより深い睡眠が得られることになります。質のよい睡眠は日中のストレス処理の効果も得られると言われています。
まとめ
歯ぎしり予防のためにはマウスピースだけでなく普段の生活習慣、ストレス対策をすることで改善することもできます。しかし睡眠時にご家族やパートナーに歯ぎしりを指摘された方は一度歯科医院を受診してみるのもいいでしょう。
また呼吸が止まっている場合は睡眠時無呼吸症候群の検査もするといいかもしれません。