噛む回数を増やすことにより、「虫歯や歯周病の予防になる」「ダイエットなど美容の面で効果的」など聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
歯科医院でお食事の時は1回につき30回は噛みましょうと推奨していますが、実際に30回噛むのは難しいと感じる方も多いでしょう。
現代人は昔の人に比べ、食べ物を噛まなくなっている傾向があります。
これは現代の食べ物が柔らかく加工されているものが多いということから、たくさん噛まなくても飲み込めるものが増えています。
しかし噛む回数を増やすことで、口腔内だけでなく、全身の健康や美容にも効果を多くの効果を得ることが出来ます。
そこで今回は、噛む回数の目安や得られる効果について解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事のポイント
噛む回数の目安は1口30回
よく噛む為の目安回数は一口につき30回が目安と言われています。
回数をカウントしながら意識して噛んでみると意外と30回噛む前に食べ物を飲み込んでしまっている方が多いのではないでしょうか?
現代食では触感が少なく、柔らかく食べやすい食事内容が多くみられます。
硬いものを無理に食べるのではなく、噛みごたえのあるものを上手く食事に取り入れる事によって、噛む回数を自然と増やすのが継続のコツです。
噛むことの8つメリット
よく噛むことで得られる8つの効果は、学校食事研究会作成した標語で覚えやすいものがあります。
『ひみこのはがいーぜ 』(卑弥呼の歯がいーぜ)
日本史でおなじみ「卑弥呼」が登場する時代の食事は、噛む回数が現代の6倍といわれています。卑弥呼はいい歯や歯ぐきをもっていたと言われていることからこのキャッチフレーズが誕生しました。
それぞれどういう意味があるのか詳しく見ていきましょう。
ひ:肥満予防
よく噛んで食事をすることにより食べ物をたっぷり食べたという満腹中枢が働き、過食を防ぎ肥満予防ができます
自然と過度なカロリー摂取を防ぎダイエット効果になります。
み:味覚発達
よく噛んで食事をすると素材そのものの味がよくわかり、舌にある味蕾を刺激しより食べ物がおいしく感じられます。またお米をよく噛むと唾液の酵素の働きで甘味が増します。子供たちの味覚の発達につながります。
こ:言葉の発音
よく噛むことによって、お口周りの筋肉をたくさん使うようになるので表情も豊かになり、口を開けてしっかり話すとキレイな発音ができます。
また顎が発達し、歯が正しく生えそろって、かみ合わせもよくなります。その結果、自然で正しい口の開き方ができ、正しい発音ができるようになるといわれています。
の:脳の発達
よく噛むことによって脳細胞を刺激します。脳の血流量が増え高齢者においては認知症の予防、小児においては知育を助ける働きがあります。
また、咬合力の強い子ほど、幾何図形のテストの点数が高いことを示すデータもあります。
は:歯の病気予防
よく噛むことによって顎が発達するので、歯がきれいに並び、歯磨きもしやすくなります。また、唾液の分泌が多くなり、プラーク(歯垢)がたまらないので、むし歯や歯周炎の予防に効果的です。
が:ガンの予防
また唾液中の成分には発ガン作用を消す働きのあるものがあります。
よく噛むことで唾液がよく出て、食物と混ざり、がん予防になります。
い:胃腸の働きの促進
よく噛むことによって消化酵素の分泌を促し消化を促進する事ができます。
それにより、胃腸の働きを活発にします。
ぜ:全身の体力向上・全力投球
力をこめて食いしばりたいときに全力を出す事ができます。
歯並びと運動能力には関係があることがわかっています。スポーツ選手は歯並びが「良い」人が「悪い」人を上回ると言われ、全力投球するうえでの歯の大切さがわかるデータです。
噛む回数を増やすコツ
1回の食事の時間を増やす
現代では、時間に追われて食事の時間が短く、ゆっくり食事を摂る時間が無いという様に食事の時間が短くなっている方も増えています。
さまざまなライフスタイルによって、食事の時間が短くなるのは仕方のないことなのかもしれません。
できる事なら1日1回でもゆっくりと食事を摂る時間をとる事により気分も落ち着いて、嚙む回数を増やす事ができます。それにより唾液の分泌、消化能力が高まります。
一回の食事時間の目安は約20分と言われています。20分以上の食事時間を設けることにより満腹中枢が作用し始めます。
満腹中枢が作用することによりダイエット効果もあり食べ過ぎを防ぐ事ができます。
食事を楽しむ
一回の食事を楽しむのもコツとなります。
例えば何かのイベントで普段行けないような高級レストランを予約したとします。素敵なコース料理を堪能しようと必然的に食事の時間も長くなると思います。
同じように毎回の食事を楽しみにすることで、おいしく食事をしようと意識すると自然と一つ一つの食材をよく味わいゆっくり食事をするようになります。
よく噛める食事作り
よく噛む食事を増やすには『食べごたえ』が重要です。
硬いものを無理に食べるのではなく、普段の食事で食材のカットの仕方、大きさを変えてみたり、硬い食材を組み合わせてみたりして、食事の時間を調整するのもいい事です。
たとえばハンバーグの中にレンコンやナッツなどを入れてみるとか、お肉を使う場合はスライス肉よりは塊肉の方を選ぶとかにすると噛む回数を増えます。
また野菜もゴロゴロと繊維を壊さす大きめにカットする、茹でるよりは生で食べるなど工夫によって噛む回数を増やすのも効果的です。
噛まないことで起こる症状
虫歯、歯周病の原因になる
あまりよく噛まないでそのまま飲み込んでしまうと、唾液の分泌が減り、唾液による自浄作用が起きなくなります。
唾液の効果として殺菌や歯質の保護、緩衝能、再石灰化などがありますが分泌量が減ることにより様々な効果が発揮されず虫歯、歯周病の悪化の原因となります。
口臭の原因となる
唾液の分泌の低下により、食べものがお口の中に残りやすく口臭の原因となります。
またよく噛まずに柔らかい食事を摂っていると舌苔(ぜったい)と言って舌に苔のようなものが付着します。舌に付着した舌苔が発酵し口臭を発生させてしまいます。
肥満の原因となる
早食いをすると満腹中枢が作用する前に食べ物をどんどん胃に運ばれることにより、カロリー過多となります。
また消化作用も働きにくいため便秘にもつながり肥満の原因となると考えられます。
噛むことの大切さ
虫歯、歯周病予防
たくさん噛むことで最大のメリットは虫歯、歯周病予防になります。よく噛むと唾液の分泌により自浄作用が働きます。また咀嚼することにより臼歯部のかみ合わせに汚れ(プラークや食物残渣)が残りにくくなります。
唾液の様々な効果によって(殺菌、歯質保護、緩衝能、再石灰化など)お口の中を守ることができます。
口臭予防
歯科医院に来院される方で、自分の口臭が気になったり、他人から試適されたという事で受診される方が多くいらっしゃいます。
接客、サービス業に携わっている方でよくあるクレームの中には対応したスタッフの口臭を挙げられることもあるそうです。
口臭を気にするあまりしっかりと口を開いて話ができなかったり、手を口元に当てた状態で話すなどコミュニケーションが消極的になってしまう場合も多いようです。
口臭はまったくの無臭の人はいませんが、ある程度の臭いはあります。
ただし嫌悪感を与えるような口臭があると様々な場面においてデメリットは多くあると考えます。
健康増進になる
よく噛むことにより脳への血流の量が増えます。
勉強やスポーツなどの場面で頭が働きやすくなります。スポーツ選手がよく試合中にガムを噛んでいるのは、集中力を高め能力を最大限に発揮させる為と言われています。
高齢者の場合、『サルコペニア』と呼ばれる加齢によって筋肉量の減少や筋力、運動機能の低下が進行することがあります。サルコペニアの初期では、日常生活において大きな支障が出るほどの症状は現れません。しかし、放置すると歩行困難にもなってしまい高齢者の活動能力の低下の大きな原因となっています
噛む回数を増やせる食品
■魚介類
さきいか、いかの刺身、ゆでだこなど
■野菜
たくあん、生のニンジン、生のだいこんなど
■肉類
牛ももソテー、豚ひれソテー、豚モモ(ゆで)など
まとめ
よく噛むことのメリットはたくさんあります。逆にデメリットはほとんど無いとも言えます。現代では毎日の忙しさによって、ゆっくりよく噛む事やゆっくりした食事の時間の確保が難しい方もたくさんいらっしゃると思います。
できるたけよく噛む時間を設けることにより、家族との会話、ビジネスにおいてはメンバーとの会話、コミュニケーションが増え円滑に仕事をする事ができるようになるとも考えられます。
また休日など時間の取れる機会には、ゆっくり時間を忘れて食事をしてみてはいかがしょうか?