子どもを虫歯にしたくない!知っておきたい虫歯の原因と予防法

「子どもの仕上げ磨きのときに歯の色の違う部分があって、虫歯かもしれない」と不安に思う方もいるのではないでしょうか?

生後6ヶ月くらいから、下の前歯が生え始め、順々に奥歯も生えてきます。ここでは子どもの歯の虫歯の解説と、虫歯にしないための予防法についてまとめていきます。

この記事のポイント

  • 子どもの歯の虫歯の特徴
  • 虫歯を予防する方法
  • 子どもの歯が虫歯になってしまったら

目次

子どもの歯の虫歯

虫歯は口の中にいる虫歯菌が原因でおこる感染症です。

虫歯菌が飲み物や食べ物に含まれる糖分を利用し、歯を溶かす酸を作り出します。糖分というと甘い食べ物や飲み物を一番想像すると思いますが、酸性の高いものも虫歯の原因になります。

この溶ける環境が頻繁に続くことで「虫歯」はできます。

前歯の虫歯

子どもの虫歯は、永久歯の黒い虫歯とは違い、歯の生え際に白濁(はくだく)という透明感の無い白い線がみられるのが特徴です。

特に、唾液による自浄作用(自然に生じる洗浄効果)が低い、上の前歯に多く見られます。白濁になっている部分の汚れを毎日しっかりと歯ブラシで取り除き、さらにフッ化物の塗布など行うと「再石灰化」が促されて、元通りのような歯に戻る可能性があります。

しかし、白濁のまま放っておくと、黄ばんだり茶色い線になり、徐々に穴があいてしまいます。

乳幼児期に虫歯になるのは、離乳食といった食事に加え、母乳やフォローアップミルクを併せて与えていることから、一日のうちで食べ物が口に入る回数が多くなり、口内が酸性に傾いていることも原因のひとつです。

母乳そのものは歯垢(プラーク)を作りにくい性質ではありますが、口の中に母乳以外の汚れが付着していると、プラークが溜まりやすく歯を溶かす酸が発生することによって虫歯になるリスクが高まるといわれています。

また、夜間の授乳は唾液量が減り、ケアが行き届きにくいため、特に注意が必要です。

参考 http://www.jspd.or.jp/contents/main/proposal/index03_03.html

奥歯の虫歯

乳歯の奥歯は小さな溝がたくさんあり、普通に歯みがきをしても汚れが落ちにくいです。

奥歯の歯磨きには、歯ブラシが届きづらい場所、もしくは細かい場所にはワンタフトブラシ(毛先がひとかたまりになっている小さな歯ブラシ)などを仕上げ磨きの際に使用をおすすめします。

ワンタフトブラシは普通の歯ブラシに比べてヘッド(歯ブラシの頭部分)が小さいため、小回りがきいて奥歯まで届きやすいというメリットがあります。また6歳臼歯の萌出途中も虫歯のリスクは高いため、タフトブラシの使用は有効です。

歯と歯の間の虫歯

大人も子どもも実は歯と歯の間が、もっとも虫歯ができやすい部分です。見た目にはわかりづらく、虫歯が進行しても気づくのが遅れ、突然穴が開いてしまいます。

歯と歯の間が虫歯になりやすいのは奥歯だけでなく、上の前歯も同様です。上の前歯は上唇が被ってしまい自浄作用が低いため、食後に食べカスや糖分が停滞します。

そのため、歯と歯の隙間が狭い場合には歯ブラシだけでは汚れが取れないためデンタルフロスを使って汚れを取り除く習慣をつけましょう。

子どもの歯の虫歯の特徴

乳歯はもともと永久歯よりもエナメル質が薄く、厚さは永久歯も2分の1程度しかありません。

そのため、虫歯になって歯が溶け始めると、比較的早く虫歯が神経まで進んでしまいます。普段、お口の中では食事のたびに歯が溶ける「脱灰」と、 唾液中に含まれるカルシウムなどのミネラルが脱灰部分に沈着して、溶けた歯を戻す「再石灰化」を繰り返しています。

虫歯がエナメル質内であれば、口内環境を整えることで、再石灰化によって治る可能性があります。

しかし、その下の柔らかい象牙質まで入ると虫歯は一気に広がってしまいます。

色の特徴

子どもの歯の虫歯は、黒ではなく白いことが多いです。そのため気づかぬうちに進行してしまいます。

穴の特徴

そして、進行すると白い色のまま、ボソボソと歯が軟かくなり、穴が開いていきます。色だけで判断をすると、一見虫歯のようには見えない事が多いので注意が必要です。

気をつけて見るポイント

普段、歯磨きをする時こそ、歯の観察をする絶好のタイミングです。ただ歯ブラシを擦り当てるだけでなく、ポイントを知って観察する習慣をつけていきましょう。

歯の表面に、白く浮いて見える部分がありませんか?

また、歯と歯の間にまだらに白くなっている部分があったり、帯状に色が濁っていたり。

これを、気に止めないで見過ごしてしまう方もいれば、「あれ?こんな色だったっけ?」と気にかかる方もいるでしょう。初期の虫歯の可能性がありますが、早期に対応することで虫歯の進行を食い止めることができます。

奥歯の深い溝に食べかすや汚れが詰まっていませんか?

子どもの歯は、奥歯に細かな溝があり、柔らかい食べ物などは詰まったまま停滞することもあります。

このような形を改善するための処置(シーラント)が歯科医院では行うことができます。

歯を削らないでできるためオススメです。奥歯の溝が頻繁に汚れやすいと気づいた場合は歯科医院に相談してみましょう。

口呼吸していませんか?

本来、呼吸は鼻で吸ったり吐いたりします。しかし、日頃から無意識で口が空いてしまっている場合は口呼吸をしているかもしれません。

なぜ虫歯に関係するかというと、前歯はもともと唾液による自浄作用が低い部分ですが、口呼吸でさらに乾燥を招くことで一気に虫歯になりやすくなるからです。

お子さんの様子を誰よりも見ているからこそ、日頃の癖に気づいてあげることが出来ます。

虫歯にしないための予防方法

歯が生えてきたら

まずは、口の中に手を入れることに抵抗をなくすため、指で口の周りを優しく触ってあげながら、徐々に口の中にも指を入れてみましょう。

そして、慣れてきたらガーゼで拭ったりしながら、少しずつ歯ブラシを使った歯みがきに変えていくのがおすすめです。

仕上げ磨き

子どもは自分では完璧に磨くことはできませんので、保育者の仕上げ磨きが必要になります。

まずは子どもに歯ブラシの大切さを伝え、保育者が見本になるように歯磨きを一緒に行いましょう。

仕上げ磨きの際は、とくに虫歯になりやすい歯の噛み合わせと、デンタルフロスを使って歯と歯の間を念入りに磨いてあげてください。

毎回、歯磨きのたびに仕上げ磨きが大変、という場合は、寝ている間が一番虫歯になりやすいので夜寝る前の仕上げ磨きは必ずしてあげてください。

また、子どもが自分で気づかないこともありますので、10歳頃までは保育者が定期的にお口の中の状態を観察し、虫歯ができていないかチェックをしてあげてください。

歯科検診

従来は「痛くなってから歯医者に行く」ことが当たり前でしたが、現在は「健康な状態が維持できているか検診してもらう」このような歯科医院が増えてきました。

また正しく磨くコツや、奥歯のシーラント、唾液検査など、予防に関する処置を受けたり新たな情報をキャッチするためにも、定期的に通える歯科医院を持つことをオススメします。

ぜひ、お子さんが楽しく通えるよう、痛くない時から通える歯科医院を探してあげてください。

子どもの歯が虫歯になったら

毎日、きちんと歯磨きしていたのに虫歯になってしまった。そんな経験をするかもしれません。

なぜなら虫歯は多因子性疾患といって、様々な原因があって引き起こされる病気だからです。もしかしたら食生活の摂り方、口呼吸、歯並びなど、歯磨きだけでは防ぎきれない原因があったのかもしれません。

治療を受ける上で、「今回虫歯になってしまった原因はなんだったのか?」と、過去を振り返り、次の予防策に向けて考えてくれる歯科医院で、安心して治療を受けましょう。

歯科医院を受診

虫歯の大きさや状態によって、削るか削らないか判断をします。お子さんが痛みを訴えていなくても、気になる状態を見つけたら受診しましょう。

治療が必要な場合とそうでない場合

歯の表面が白いだけで、まだ穴が空いていない状態であれば、フッ化物を塗布して再石灰化を促すことで、虫歯の進行を抑えることができます。この場合は削りません。

少し穴が空いた状態であれば、虫歯の部分を削り、レジン(プラスチック素材)の詰め物をする治療をします。しかし、虫歯が神経まで到達しているようであれば、神経を除去する根管治療が必要になってきます。虫歯の大きさはレントゲン撮影を行い診断しますが、想像より広がってしまっているケースも少なくありません。

最近ではレーザーを用いることで虫歯の部分を殺菌し、さらに歯の強化を同時に行うなど、できる限り歯を削らない治療を推奨している歯科医院もあります。

深い虫歯の場合

虫歯が歯の内部まで進行し、神経を取り除いて、大きく削らなければならない状態でも、基本的には抜歯をしない治療がとられます。

乳歯を抜くことで、隣の歯が傾いてしまうと、永久歯が生えてくるスペースがなくなるからです。永久歯の歯並びにも影響することなので、子どもの歯の抜歯はできるだけ避けるべき治療なのです。いずれは抜ける歯だからといって油断してはいけません。

治療について

子どもの虫歯は大人と違って進行が早いという特徴があります。なぜなら、乳歯は永久歯と違って、表面のエナメル質もその内側の象牙質も薄く、永久歯の半分程度となります。一方、永久歯へスムーズに生え変わるために、根管組織(神経や血管組織)の占める割合は大きくなっています。従って、乳歯の白い虫歯を放置すると、大事な根と神経を傷つけてしまうかもしれません。生え変わる時のことをきちんと考えて、早めの処置を行いましょう。

どのくらい痛みがあるのか

子どもはまだ痛みの感覚が発達していないため、痛みがあっても気付きにくいので虫歯が大きく進行してしまうことが多いです。虫歯の痛みで感じるよりも、虫歯で穴が開いて、そこに食べカスが詰まって歯茎が腫れて痛い場合が多く見られます。

初期虫歯の治療

乳歯の初期虫歯の色は、ミネラル分が溶け出して白濁している場合が多いです。

この状態は、歯を削る治療はせずに、フッ化物を使用して歯を強化し、溶け出したミネラル分が戻りやすい環境に整えます。これを続けることで、歯の質が戻ります。

また、虫歯が進行している範囲がエナメル質に限局している場合は、虫歯を取り除き、プラスチックで詰める治療をします。虫歯を取り除く時には、麻酔が必要になるケースもありますが、ほとんどの場合は麻酔をしなくても痛みを感じないで治療をすることができます。

神経まで広がった虫歯の治療

乳歯の虫歯は進行が早いので、神経まで広がることもあります。乳歯の虫歯は進行が早いので神経まで広がることがあります。乳歯の虫歯が神経まで広がると神経をとったり、切断したりする必要が出てきます。乳歯にとって神経は永久歯との生えかわりにとても大切なものです。

しかし、神経まで虫歯菌が入ってしまったら、根の先に膿をため永久歯を変色させたり、歯並びを悪くしたりするので根の治療をします。

また、神経がない子どもの歯は永久歯との交換の際に、グラグラしにくいことがあります。

良いタイミングで生え変わることが大切なので、グラグラしていない子どもの歯は邪魔をするようであれば抜歯することになります。

麻酔はつかえるのか

歯科医院で虫歯治療で行う麻酔は、主に「浸潤麻酔」といって、麻酔液を歯茎内部に注入します。子どもは、歯肉や骨の厚みが薄いため成人の半分以下の麻酔の量で行います。

しかし、歯茎が炎症を起こした「酸性」の状態は麻酔が効きづらいこともあります。また、歯の根っこの先に膿が溜まっている状態は、膿の袋の中で強い炎症が起きてしまうと麻酔の効果が得られにくいです。

そして、子どもの虫歯治療で使用した場合は、治療後1~2時間程は感覚が無いため、唇や頬の内側を噛んで傷つけないよう、保育者による予後観察が必要です。

乳歯治療は繰り返す

乳歯の治療は永久歯のようにしっかりとした治療ができないことがあります。

その理由の一つは、乳歯は永久歯に比べ、歯のすり減りが早く、詰め物が浮いた状態になって、取れてしまいやすいことです。また子どもは唾液量も多い為レジンなどの詰め物がくっつきにくい環境化にもあります。

二つ目は永久歯が下から生えてきて、乳歯の根が溶かされ短くなるため、根の治療はしっかりとできず、腫れを繰り返すことがあることです。一度歯を削ってしまうと再治療をする可能性が高まりますので定期的な観察が必要になります。

まとめ

よく病気が治癒するといいます。治癒とは「体が元通りに治る」という事です。

しかし、虫歯の場合、決して元通りに治ることはありません。溶けてしまった歯は戻ってこないからです。歯医者さんは虫歯になった部分をきれいに除去して、人工物を詰めたり、被せたりして治療を行っています。当然、治療した歯は、元の健康な歯に比べれば弱いのです。

お子さんの歯が虫歯になった原因を、かかりつけの歯医者さんと共に考え、お子さんのお口をとりまく生活環境を改善することが、何よりも重要な治療法ではないでしょうか?

そして、保育者も歯科医院も、お子さんの健康な歯を守りたい理由はただ一つです。お子さんが毎日の食事を美味しく楽しく食べ、元気に生活することを、共に支えましょう。

記事監修

小野澤 彰/歯科医師

小野澤 彰

歯科医師・AOBIデンタルクリニック院長

  • 1996年 東京歯科大学卒業
  • 1996~1998年 東京医科歯科大学研修医
  • 1998~2002年 都内歯科医院勤務
  • 2002年4月1日 歯科オノザワ開院
  • 2024年5月1日 AOBIデンタルクリニックに改称

詳細プロフィール

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