親知らずやその他の歯を抜いた後、徐々に治まっていくはずの痛みが次第に激痛に変わっていき、心配や不安になる方も多いのではないでしょうか?
その痛みはドライソケットの可能性があります。ドライソケットは抜歯をした人の約2~4%に起こるといわれます。特に下の歯の親知らずで高い割合で起こるといわれています。
今回はドライソケットの症状と対処法について解説します。ぜひ参考にしてください。
痛みが激しい場合は自己判断せずにすぐに歯科医院を受診してください。
この記事のポイント
- 抜歯後の痛みはドライソケットが原因かもしれません
- ドライソケットの原因がわかる
- ドライソケットの対処法がわかる
ドライソケットとは
抜歯した部分(穴)が血餅(固まり始めた血液)でふさがれず、骨の部分がむき出しになってしまい、激しく痛んでしまう事をドライソケットといいます。
通常は抜歯後約1~4日で抜歯の痛みは治まってきますが、痛みが一週間以上続き、更に痛みが強くなり触れると痛いなどの症状がでます。
これは何らかの原因で抜歯した部分(穴)が血液で覆われず、かさぶたが出来なかったため、骨の上に新しい歯肉が作られず、骨が露出したままの状態になっています。穴の部分に物が入ったり、歯ブラシの毛先が直接触れると強い痛みを感じます。
ドライソケットは抜歯窩治癒不全とも呼ばれ、抜歯後の発生率は約2~4%、下顎の親知らずにいたっては約20%ともいわれます。
ドライソケットの症状
抜歯後約2~4日後経っても痛みが治まらず、悪化してしまいさまざまな症状がでてきます。
一番の特徴は激しく強い痛みでしょう。
抜歯後3~4日で痛みが増し、激痛に変わってくる
通常約1~4日で時間の経過とともに治まる痛みが、だんだんと強くなり、激痛に変わります。
通常、時間とともに血餅(固まり始めた血液)でふさがる穴がふさがれず、骨が露出したままになっているため空気に触れた時や物が直接触れる事で、リンパから顔面、頭の方まで痛くなるなどの症状がでてきます。
傷の中が白っぽく、嫌な臭いがする
通常、治癒過程に出来るべき赤黒いゼリー状の血液の塊である血餅ができずに骨がむき出しになってしまっているため、穴の部分は本来の赤黒い色ではなく、白っぽく見えます。
また、露出した骨が細菌に感染してしまうと腐敗臭のような悪臭を感じることもあります。
ドライソケットの原因、予防
直接的な原因は血餅という赤黒いゼリー状の血液の塊(血餅)が出来なかったためです。
血餅はいわば「かさぶた」のような役割があります。血餅は骨を覆い、治癒を促進させ、細菌から傷口を保護してくれます。
大切な血餅が出来ない主な原因を以下に挙げます。これらを避けて生活することで、早期治癒を図ることができます。
抜歯後の頻繁なうがい
抜歯後は口の中が血でにじんでしまったり、血の味がして気になり、何度も強くうがいをする人が多いと思いますが、これは避けてください。少量の出血でも唾液と混ざり、出血量が多い感じがして不安になる事もあります。
また、固まり始めた血餅をうがいをすることで洗い流してしまい、せっかくできた「かさぶた」を剥がしてしまうことになります。
血がにじんで気になるようでしたら、清潔なガーゼなどを強く咬み、圧迫して止血してください。
どうしてもうがいをするのであれば、軽くゆすぐ程度にしましょう。
何かを吸ったり、口の中の圧を頻繁に変える
抜歯後は食事がしにくいので、あまり嚙まなくていい栄養ゼリーなどを吸うことで食事を取る方も多いと思いますが、これも避けて下さい。
口をすぼめて吸う動作により固まり始めた血餅を一緒に吸い出してしまうことになります。
抜歯後~約4日は吸う動作や口の中に圧を加えるような動作は避け、なるべく軟らかい物を食すようにして、栄養も取るようにして下さい。
また、強く鼻をすする、鼻をかむ、咳をするなどの動作もできるだけ避けた方が良いでしょう。
喫煙をする
たばこは血流を悪くし、傷の治りを悪くするともに、血餅が出来にくくなります。
抜歯後~4日程度はたばこをひかえめにすることで免疫も上がり、傷の回復も早くなります。
血流を良くしてしまう
飲酒、激しい運動、長時間の長い風呂、サウナなどの血液の循環が良くなりすぎる行為は血餅ができにくいので抜歯後~約2日は避けましょう。
また、抗凝固薬を服用している人も血が止まりにくく血餅ができにくいですので、抜歯前に担当の内科医に相談すると良いでしょう。
過度に傷口をいじる
抜歯後穴が気になって舌でいじってしまったり、傷口に食べ物が入ってひっかかってしまって気になり、傷口をさわってしまう人が多いですができるだけ避けてください。
舌でいじって傷口が開いてしまったり、血餅が剥がれたりすることがあります。また、傷口の細菌感染を防ぐためにも過度に傷口をいじらないようにして下さい。
口の中が清潔でない
抜歯時にプラーク、歯石により口の中の環境が悪いと傷口から感染リスクが高まり、治癒不全になる確率が高くなります。
必ず抜歯以前にクリーニングなどをしてもらい、口の中の環境を整えておきましょう。
また、抜歯後も強い頻繁なうがいは避けていただきたいですが、できるたけ患部を清潔に保っておくことが、感染予防につながります。刺激の少ないうがい薬を使用することもお勧めします。
体調の悪い時、ストレスでイライラしていた時の抜歯
やはり抜歯後の治癒、改善は自己治癒能力を高めておくことが大事です。
免疫、抵抗力が低下していると当然治癒能力も低下していますので、体調の良い時にリラックスして抜歯に臨む方が良いでしょう。
女性の方は生理中の場合、抵抗力が低下するという報告もありますので、抜歯は避けた方が良いかもしれません。
ドライソケットかも…と思った時、自宅でできる緊急対処法
もしもドライソケットの症状が出てしまい痛みが悪化してきたら、まずは歯科医院に連絡をして下さい。
まずは傷口を診てもらい対処してもらうことが治癒の近道となります。
それでもすぐに歯科医院に行けない場合の対処法をいくつか挙げます。
痛み止めを服用する
ドライソケットの痛みはかなり強く、悪化していまうとこめかみや首すじ、頭痛まで出てくることがあります。我慢せず痛み止めを服用してください。
痛みが強いと1~2時間で効果がなくなってくることがありますが、少しずつ痛みがひくようであれば、痛み止めを飲む間隔もあけて下さい。
とにかくいじらず安静にする
痛みが強いと傷口が気になると思いますが、むやみに触れず、刺激を与えない方が良いでしょう。
痛みを忘れようと無理に仕事をしたり、ストレスのかかることも避け、安静に休息をとるようにすることが大切です。併せて栄養も充分とり、抵抗力をつけることも重要です。
病は気から
痛みが強くと心配・不安だと思いますが、人間の持つ自己治癒能力を信じ、クヨクヨせず気持ちを強く持ちましょう。
悪化させないようにすれば、時間の経過とともに必ず痛みはやわらぎ、傷も治癒していきます。
歯科医院で行う治療法
穴を洗浄・消毒して傷口を保護する
まずは露出してしまった骨面を洗浄・消毒し、抗生剤軟膏やコラーゲンゼリー、またはヒアルロン酸などにより被覆し保護をすることで痛みを和らげます。
麻酔をしてもう一度出血させる
露出したしまった骨面に再度血餅ができるように、もう一度わざと傷をつくり出血させる事で、傷口にかさぶたを作るという方法です。
露出した骨が細菌感染してしまうと骨炎に発展し、重症化しますので、なかなか痛みがとれず、骨面が保護されない場合には選択すべきかもしれません。
抗生物質を処方する
ドライソケットは細菌感染を起こしているが多いため、抗生物質も処方される事が多いです。
抗生物質は痛みが和らいだからといって途中で飲むのをやめず、必ず飲みきるようにしてください。
まとめ
ドライソケットになると激痛が続き、体力も消耗しますし、かなり辛いものです。
抜歯をする時にはきちんと体調を整え、口腔内環境を整え、ストレスなくリラックスした気持ちで歯科医院を訪れるようにして下さい。
また、抜歯後も歯科医院での注意事項をしっかり守り、ドライソケットを回避しましょう。