妊婦は虫歯になりやすい!その原因と予防法、治療について

妊娠中は虫歯になりやすいと聞いたことはありませんか?実際に妊娠してから虫歯が増えてしまった妊婦さんもいらっしゃると思います。

妊娠中のさまざまな要因から虫歯ができやすくなります。疑問を1つずつ解決して不安をなくしましょう。

この記事のポイント

  • 妊娠中に虫歯になりやすい理由
  • 妊娠中の歯科治療
  • 妊娠中のお口のケア

目次

妊娠中に虫歯になりやすい理由

妊娠中は唾液の性質、分泌量の変化や、つわりによる食習慣の変化など様々な変化がおこり虫歯になりやすくなります。

つわりで歯磨きがしっかりできない

つわりの時期の歯磨きは気持ち悪くなる妊婦さんが多くみられるようです。

つわりの時期は無理をせず体調の良い時に磨くようにしましょう。なるべく気持ち悪くならないように歯磨きをするポイントを紹介します。

① 無理をせず体調のよい時に磨く事

② 歯磨き粉は香料の少ないものを選ぶか、つけなくてもOK
香料のきついもので気持ちが悪くなる事がよくあるようです。香りの優しいものを選ぶか、歯磨き粉自体で気持ち悪くなるならつけないで磨いてみましょう。

③ 歯ブラシはコンパクトなものを選ぶ
歯ブラシが舌に当たると気持ち悪くなる事が多いのでなるべくブラシの部分のコンパクトなものを選びましょう。

④ 歯磨きの姿勢は下向きに、奥歯から磨く
歯磨きの時お口中に溜まる唾液がノドの方に流れていくと気持ちが悪くなりやすいので洗面台の前で下を向きながら磨くのもポイントです。
その際は奥歯から汚れを掻きだすように小さく細かく動かしながら磨くと気持ち悪くなりにくいです。

⑤ どうしても磨けないときはデンタルリンスでうがい。
それでもどうしても磨けない時もあると思います。そんな時は無理をせずデンタルリンスやお水でうがいをしましょう。

食生活の変化

妊娠初期はつわりの影響で少ない食事量を複数回に分けて食べるようになったり、食事の好みが変化したり偏ったりすることがあります。食事の回数が増える事によりお口の中のpHが酸性の状態に傾き、その状態が続きやすくなります。

お口の中が酸性に傾く事により歯の脱灰がすすんで虫歯になりやすくなります。

お口の中が酸性になる

これまでお話したようにホルモンバランスの変化による唾液の性質や分泌量の変化や食習慣の変化によりお口の中pH(ペーハー)が酸性に傾きやすい事があげられます。さらに妊娠初期のつわりの時期は胃酸が逆流する事により酸性度が高まります。

ホルモンバランスの影響によるもの

妊娠中は女性ホルモンのバランスが崩れます。ホルモンバランスが崩れる事により歯肉の腫れが起きやすくなり(妊娠性の歯肉炎)、唾液の性質が変化し少し粘液度が増しドロドロ気味になり、分泌量も減ります。

それによりお口の中が酸性に傾きやすく唾液の抗菌作用、自浄作用の低下が起きやすく虫歯になりやすくなるのです。

妊娠中の歯科治療について

妊娠中の歯科治療は大丈夫なのか不安や疑問がたくさんあると思います。かかりつけ歯科医院で相談しながら安心して治療を受けましょう。

妊娠中のレントゲンは大丈夫?

歯科のレントゲンによる被ばくは胎児に直接的な影響を及ぼす事は実質的にはないのでレントゲンは撮影しても問題ありません。胎児に影響の出る可能性がある放射線被ばく線量に達するには、歯科のレントゲンでは約50,000回位です
ただし妊娠初期は放射線の感受性が高いため注意した方がよいですが、敏感になりすぎてレントゲン撮影をしないと正確な診断や治療が行えない事もあります。必要性など担当の歯科医師と相談してみるとよいでしょう。

妊娠中の歯の麻酔は大丈夫?

歯科治療で使用する麻酔は局所麻酔ですので心配はありません。痛みを我慢して治療を行うと胎児への影響も考えられるので安心して治療を受けましょう。

一般的に多く使われている2%塩酸リドカインは通常の使用量であれば問題ありません。ただし麻酔に追加されている血管収縮薬の種類によっては軽度の子宮収縮作用や分娩促進作用があるものがあるため特に妊娠後期では使用を控えた方がよい場合もあるので、心配であればかかりつけ歯科医師に確認してみましょう。

どうして妊娠中に虫歯治療しておかないといけないの?

妊娠中の虫歯治療は妊婦さん自身の為でもあり産まれてくる赤ちゃんの為でもあります。

産まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には虫歯菌も歯周病菌も存在しません。

虫歯や歯周病の原因菌も細菌なので感染するのです。家庭内の感染が一番多く、特に一番長い時間赤ちゃんに接する母親からの感染が多いのです。

そのためできるだけ妊娠中にしっかりと虫歯の治療をする事、またブラッシング指導を受け細菌の数を減らし赤ちゃんへの感染リスクをさげる必要があります。

また産後はなかなか自分の時間がとれず、生活リズムも赤ちゃん中心になっていくのでできる限り出産前に自分のメンテナンスをしておくとよいでしょう。

虫歯治療できる時期は限られる!

妊娠中の虫歯治療で胎児の影響を気にされる方も多くいらっしゃいます。十分に配慮して行えば大きな影響はないと考えられますが、そのリスクを避けるためにも体調が比較的落ち着いている時期である妊娠中期(16~27週)に歯科治療を行うのがベストでしょう。

出産後は赤ちゃんが優先になり、ご自身の虫歯治療の為に歯科を受診するのも困難になるため放置した虫歯が進行し初期であれば残せた歯を抜歯しなければいけなくなったりするので費用もその分必要となります。

そのため妊娠中に虫歯がある事が分かった場合は、出産後まで放置せず妊娠中に治療をするようにしましょう。
外科的な大きな治療が必要な場合は産婦人科との連携が必要となる場合もあります。

▼妊娠中の歯科治療についてはこちらの記事も参考にしてください

妊娠中のお口のケア

妊娠中はつわりの影響でお口のケアが難しくなる場合があると思います。無理せず体調に合わせてケアをしていきましょう。

歯磨きは特にリスクが高い場所を丁寧に

なかなか時間をかけて磨けない事もあると思います。

そういった場合は特に虫歯リスクの高い所に重点的にケアしましょう。

① 歯と歯の間

② 歯と歯ぐきの境目

③ 奥歯の噛み合わせ

④ 歯と歯が重なったところ

こういった場所はとても歯垢(プラーク)がたまりやすく虫歯になりやすいです。

リスクの高い場所のケアを心がけましょう。

歯間ブラシやデンタルフロスで仕上げ

つわりがひどく嘔吐や悪心がある場合は比較的体調が良い時に歯間ブラシやデンタルフロス等の補助清掃用具を使ってケアを行ってみましょう。

フロスは指巻きタイプとホルダータイプがあります。指巻きは口の中に指を入れる必要があるので、ホルダータイプの使用がお勧めです。

デンタルリンスを使う

フッ素や殺菌成分(クロルヘキシジン等)を含んだデンタルリンスを使ってみましょう。虫歯の原因である歯垢は細菌のかたまりです。どうしても歯磨きが気持ち悪くてできない場合は殺菌成分の含まれているデンタルリンスでうがいするだけでも予防の効果があります。市販で売っているものはアルコールが含まれているものもあるので、注意してください。

販売:株式会社ウェルテック
商品;コンクールF
成分:グルコン酸クロルヘキシジン0.05%配合
価格:100ml 1000円(税別)

そのほか妊婦によくあるお口のトラブル

妊娠中はホルモンのバランスが変わるので虫歯の他にもさまざまな影響があります。

歯周病になりやすい

虫歯菌と同様に妊娠中のお口の中の状態の悪化により歯周病菌も増加しやすくなります。妊娠前から歯周病に罹患していた場合、症状が悪化しやすくなります。また歯周病に罹患すると炎症性の物質(サイトカイン)が生成されます。この物質(サイトカイン)には子宮収縮物質産生を促進させる働きがあります。これにより早産を促す可能性もあるのです。

また炎症の程度によっては歯周病菌が血流を介して胎盤へ移行してしまい胎児の発育不全や低体重児出産などの影響も考えられます。
そのため虫歯のケアももちろんですが歯周病のケアもしていきましょう。

お口のネバネバ・口臭が起きやすい

女性ホルモンのバランスの変化により唾液の粘液度が増すのでネバネバしやすく、また唾液の分泌量も減るのでお口の中が乾燥しやすく口臭もでやすいのです。

妊娠性エプーリスになりやすい

妊娠性エプーリスと呼ばれる良性腫瘍ができる場合があり、妊娠性の歯肉炎同様にホルモンバランスの影響などが考えられます。

妊娠性のエプーリスの場合は出産後自然消滅する場合が多く、生活に支障をきたす場合は外科的切除を必要としますが支障がない場合は経過観察していきます。

歯肉が大きく腫れてしまった場合は歯科を受診し専門家による診断とお口のケアの方法を指導してもらいましょう。

口内炎になりやすい

妊娠中口内炎になりやすい事があります。原因としてはホルモンバランスの乱れ、つわりの影響で栄養が偏ったり、歯磨きができない状態が続く事でお口の中が不衛生になる事などがあげられます。口内炎は自然治癒する場合が多いですが、心配な場合は歯科を受診し処方薬をもらいましょう。

市販されている軟膏薬には妊娠中控えた方がよいステロイドが含まれているものがあるため自己判断で塗らないようにしましょう。

心配なときは、歯科医院に気軽に相談してみましょう。

安定期(5か月頃)に入ったら歯科検診を!

歯科治療は妊娠中期の安定期(16~27週)に行うのがよいでしょう。

妊娠初期の特に4~7週は催奇形の可能性が高く、妊娠後期は仰向けになるとお腹が圧迫されやすく体に負担がかかります。

妊娠初期や後期はできるだけ応急処置にとどめるようにしできるだけ安定期に治療をしてもらうようにしましょう。

 

▼妊娠中の歯科検診についてはこちらの記事も参考にしてください

まとめ

妊娠中はホルモンバランスの乱れや食習慣の乱れなどによりお口の中にさまざまな影響を与えやすくなります。

記事を書いている歯科衛生士の私も食べ物の好みが、かなり偏りトマトと塩むすびばかり食べていました。
つわりなどで体調も変化しやすくなるので、歯磨きも歯科治療も無理をせず体調の良い時にしていくのがよいでしょう。

出産後の赤ちゃんへの影響も考えできるだけ虫歯の治療もしっかりと行い、お口のケアをすることにより赤ちゃんへの虫歯菌の感染のリスクをさげる事も大切です。

妊娠中は自分のこと、赤ちゃんのことを考えると不安や疑問がたくさんあると思います。

歯科を受診することで不安を解消する事もできると思いますので安心して歯科を受診してみてください。

記事監修

小野澤 彰/歯科医師

小野澤 彰

歯科医師・AOBIデンタルクリニック院長

  • 1996年 東京歯科大学卒業
  • 1996~1998年 東京医科歯科大学研修医
  • 1998~2002年 都内歯科医院勤務
  • 2002年4月1日 歯科オノザワ開院
  • 2024年5月1日 AOBIデンタルクリニックに改称

詳細プロフィール

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