唾液を調べてなにがわかるの?本当に調べた方がよいのだろうか?と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
歯科医院で唾液検査を勧められた方もいるかもしれません。
唾液検査は自分の唾液を調べることで、虫歯や歯周病になる原因がわかり、自分にとって効果的な予防法アドバイスを受けることができます。虫歯や歯周病の原因は人それぞれです。
今回は、唾液検査をすることで具体的に何がわかるのか、唾液検査にはどんな良いことがあるのかを歯科衛生士が解説します。ぜひ参考にしてください。
この記事のポイント
- 唾液検査のメリットがわかる
- ”唾液検査でわかること”がわかる
- 検査の種類がわかる
唾液検査(サリバテスト)のメリット
自分のお口の状態を知り、自分に合ったケアが出来るようになる
歯科医院で唾液検査を受けることは、内科などで血液検査や血圧測定を受けることと同じくらい重要な意味を持ちます。
検査を受けることで、今まで気づかなかった自分の様々なお口の状態を知ることが出来ます。検査の結果により、現在気をつけるべき点や、将来考えられることを予測することも出来ます。
また分析結果を知ることで、歯科医院への通院の仕方や、自宅でのセルフケアの仕方が大きく変わることになるでしょう。
虫歯リスクを知る事が出来る
唾液検査を受けることで、自分の虫歯や歯周病のリスク(なりやすさ)を知ることが出来ます。
毎日きちんと磨いているのにどうして何度もむし歯や歯周病になるのだろう?そのような方は、唾液検査でわかる唾液の量や質、むし歯菌・歯周病菌の種類・量などのいずれかに問題があるかもしれません。
歯周病リスクを知る事が出来る
歯科医院で行われている唾液検査の多くは、むし歯に対するものがほとんどですが、歯周病のリスクを調べることが出来る唾液検査もあります。
唾液中のpH値やタンパク質、酵素、ミネラル、細菌の存在などが測定できることにより、口腔の健康状態や全身の健康状態を評価することもできます。
唾液検査でわかること
唾液の量
分泌量が多ければ多いほど、お口の汚れを自動的に洗い流してくれる自浄作用が高まります。唾液の少ない人は、むし歯の発生するリスクが高いといわれています。
人間は1日に約1.5〜2リットルの唾液を分泌していると言われ、基本的に年齢とともにその分泌量は減少していきます。しかし体調や生活習慣、薬の服用などで個人差があります。
唾液の緩衝能
安静時のお口の中は中性に保たれていますが、食事をするとお口の中は酸性に傾き、歯の表面のエナメル質が溶けます(脱灰)。しかし、食後に分泌された唾液の中のカルシウムやリンにより、溶けた歯の表面のエナメル質は再び元に戻ります(再石灰化)。
この酸性から中性に戻す中和力のことを緩衝能と言います。唾液の㏗を調べるには専用の試験紙に唾液を触れさせ、色の変化で測定することが出来ます。
むし歯原生細菌
むし歯の原因となる代表的な菌に、ミュータンスレンサ球菌とラクトバチラス菌があります。
ミュータンスレンサ球菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)
この菌がたくさんいるとむし歯の数も多くなる傾向が強いです。
ミュータンス菌は約1μm(マイクロメートル)という小さな球状の菌です。口腔連鎖球菌と呼ばれる種類に属し、多くの人の口の中に存在します。ツルツルな硬いエナメル質に簡単に付着し糖を取り込み、その代謝物として強い酸を吐き出します。歯の成分であるカルシウムやリンを溶かし、エナメル質に穴を開けて、むし歯ができます。
ラクトバチラス菌
この菌がたくさんいるとむし歯が深く進行しやすくなります。
乳酸菌の一種で、善玉菌として知られています。この菌はツルツルな硬い歯の面(エナメル質)には付着しにくく、ミュータンス菌が開けた穴や、古い詰め物や合っていない被せものなどの隙間や引っかかりのあるところで繁殖します。砂糖の摂取量が多いと増えやすくなります。
カンジダ菌
「カンジダ・アルビカンス」という真菌(カビ菌の一種)で、お口の中の常在菌です。カンジダ菌は感染症を引き起こす能力が低い細菌のため、健康な人が口腔カンジダ症を発症することは非常にまれです。体調や体力の変化で免疫力が下がると増殖します。
また、入れ歯などでお口の中が不衛生な状態が続くと増殖しやすくなります。
歯周病菌
歯周病菌は実にたくさんの種類(500〜800種類)があります。よく解明されていないものの方が多いです。
どれも酸素が嫌いな菌で、酸素の少ない歯ぐきの溝に入り込み、セルフケアを怠り不潔になると爆発的に繁殖します。そして歯ぐきに炎症をおこさせ、歯周ポケットを作ります。
繁殖した菌は、歯周ポケットの中から血管へ入り込み全身へと流れていきます。行き着いた臓器で血栓を作り、動脈硬化などを引き起こしやすくします。
慢性的な歯周病でみられる「レッド・コンプレックス(red complex)」と呼ばれる歯周病菌を挙げてみます。
これらの菌は、歯周病に最も関連があると言われています。慢性的な歯周病では、これらの菌が1000倍以上にも増えるともいわれています。
ポリフィロモナス・ジンジバリス菌(P.g.菌)
特に日本人には多いと言われています。
血液などのタンパク質やアミノ酸を好み、代謝するときに悪臭を放ち、口臭の大きな要因なります。そして歯肉に炎症を起こさせる強い影響力があります。
トレポネーマ・デンティコラ菌(T.d.菌)
スピロヘータと呼ばれるグラム陰性菌で、歯周ポケットの深部に生息します。 歯周組織の破壊を引き起こす物質を放出し、歯周病の進行に関与します。歯ぐきから血管の中に入り込んで血流にのって全身の組織に運ばれます。
タンネレラ・フォーサイセンシス菌(T.f.菌)
タンパク質分解酵素や菌体内部に毒素を持ちます。この内毒素によって歯を支えているあごの骨の吸収を引き起こします。空気を嫌う性質があるため、歯周ポケットの内部に潜みます。
検査は保険でできるのか
唾液検査は保険対象外ですので、自費負担となります。
費用の相場
歯科医院によってやっている検査に違いがありますが、約3000〜10000円ぐらいで実施しているところが多いようです。
時間や回数
唾液検査には、当日わかる項目と、数日かかる項目とがあります。
当日にかかる時間は、歯科医院によっても差がありますが、30〜60分と見ておくと良いでしょう。回数は検査当日と結果説明を受ける日で、2回かかる場合が多いです。
検査方法
専用のガムを一定時間咬み続け、分泌された唾液を専用容器に吐き出し、量を測定します。
吐き出した唾液を使い、酸に対する中和力やむし歯菌の培養を行います。
また、専用スティックを舌にこすりつけ菌を測定する方法もあります。
検査した後はどうするのか
予防プログラムの立案
検査結果を参考にこのあとの治療内容や期間、どのようなホームケアをしたらいいかを提案します。ひとりひとりの結果に合わせて内容が変わってきます。歯科医院でご自身にあった予防プログラムを提案してもらってください。
個々にあった検診の間隔
リスクが高いと診断された場合は3ヶ月に一度ほどの間隔にしてこまめに検診やクリーニングを受けておくと安心でしょう。
個々に合ったホームケア用品の処方
検査結果によって、様々な指導やホームケア用品の提案を受けてみてください。
唾液の量が少ない場合は、ガムなどを利用して咀嚼トレーニングを行ったり、唾液腺マッサージの指導を受けると良いでしょう。専用のマウススプレーや口腔内ジェルなどで唾液の分泌を促すことも出来ます。
また再石灰化を助けるフッ素入りの歯磨き剤や、カルシウムやフッ素が含まれたガムを食後に取り入れると効果的です。
ミュータンス菌が多い場合には、食後のキシリトールガムの摂取が有効です。
ラクトバチラス菌が多い場合は、歯と歯の間などしっかり磨くようにフロスや歯間ブラシを活用してください。また食事の時も砂糖の摂取は気を付けるといいでしょう。
むし歯が深く進行するのを防ぐために歯質を強化できるハイドロキシアパタイト入りの歯磨き剤を選択するのも有効です。
検査は本当に必要?
唾液検査は絶対に必要な検査というわけではありません。しかし、より詳しい診断や個人に合った指導を受ける意味では非常に有効な手段と言えます。
唾液検査をしなくても虫歯予防は出来ます。実際のところ唾液検査を導入していない歯科医院は多くあります。
しかし、検査によって得た情報を、ご自身と歯科医院が共有することで、むし歯の繰り返しを防ぎ、予防効果の高い治療計画を立てることが出来ます。より質の高い予防治療が受けられる可能性が高まるとも考えられます。
その結果にあわせて歯周検査や問診、食生活の内容などの資料とともに、個人にあった虫歯や歯周病の予防プログラムを立案します。
(AOBIデンタルクリニックでは取り扱いなし)
検査の種類
唾液検査(デントカルト)
専用ガムを5分間咬むことにより分泌された唾液の量を量ることが出来ます。
ミュータンス連鎖球菌やラクトバチラス菌、唾液分泌速度、唾液緩衝能など、一人ひとりのカリエスリスクを可視化する評価ツールです。
RDテスト
RDテストは、唾液中の虫歯菌の数を調べる検査で、口腔内の衛生状態を判定します。唾液中の菌の量に応じて、パッチシートの色が変化することで、虫歯になるリスクを推定できます。
口腔内細菌カウンタ
口腔内細菌カウンタとはDEPIM法を用い、口腔内の総菌数*を約1分で定量的に計測する機器です。滅菌綿棒を定圧検体採取器具にセットして口腔内の舌上の検体を採取します
[舌下からの検体取方法]
舌下部に滅菌綿棒を10秒間静置し、唾液を滅菌綿棒に吸収させます
令和6年度 診療報酬改定により「口腔細菌定量検査」が適用拡大されました。
唾液検査以外の検査
【位相差顕微鏡】
歯についている歯垢を採取し、顕微鏡にセットすることで、歯周病菌を観察することが出来ます。生きたままの細菌を観察することができるので、細菌が活発に動いていると歯周病が進行している可能性が高いと考えられます。
歯周病菌や虫歯菌などの細菌の種類や量、密度を把握することで、患者に適した治療や予防方法を提案するのに役立ちます。
まとめ
私たちが生活していく上で欠かせない物質である唾液。自浄作用や抗菌作用など、唾液はさまざまな役割を持つと同時に、多くの情報を秘めています。
その唾液を調べることで、自分がどのような体質であるのか、どのようなことに気をつければ効率よく健康を保つことが出来るのかがわかります。一度受けてみることによって自身の身体の知る事ができるので、検査を受けてみるのもいいと思います。
すべての歯科医院が唾液検査を導入しているわけではありませんので、検査を希望する場合は、歯科医院のホームページなどを調べ、実施しているかを確認してみることをおすすめします。