歯医者で行う歯石取りの器具と手順を歯科衛生士が徹底解説

定期的に行う必要のある歯石除去ですが、自分自身で除去できないだろうか?と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。

歯科医院で歯石除去をしている時、「歯も一緒にけずっているのではないか不安」、「機械の甲高い音がどうしても苦手」などの相談を寄せられることがあります。

歯科医院では、いくつもの専用の器具で国家資格を持った歯科衛生士が取り残しのないように痛みを最小限に抑えながら安全に行います。
そこで今回は、歯石除去は自分自身でできるのか、歯科医院で使われている器具や手順について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。

この記事のポイント

  • 歯科医院で行う歯石除去について
  • 歯石除去の流れについて
  • 定期的にクリニックで歯石除去をするべき

目次

自分で歯石除去しても大丈夫?

『自宅で簡単にできる』とうたっている歯石取りの器具も販売されているようですが、ご自身でケアをすることはおすすめできません。

しっかりと見えるところであれば、器具の操作は簡単に思えますが、歯石取りのプロである歯科衛生士や歯科医師は、歯石取りについての知識や技術を学び、国家資格を取得しています。

自分で歯石除去する場合、歯石がしっかりと取りきれないだけでなく、間違ったケアで健康な歯や歯肉を傷つけてしまうことが多くあります。特に歯石は歯と同じ乳白色をしているため、一見取れてると思っても残っていることが多いので、やはりプロの歯石除去が確実です。

ご自宅でできるおすすめは、しっかり正しく歯みがきをすることです。歯石は歯垢が唾液中のカルシウムと時間の経過で固まったものになります。2日で約5割の歯垢が固まって歯石になるといわれているため、毎日の歯磨きで歯垢を落とすことが一番の予防です。

◆市販されている歯石除去の器具

最近では、歯みがきなどの口腔ケア(オーラルケア)が注目されることが多くなり、市場にも市販のオーラルケア用品とともに、歯科専売のオーラルケア用品を目にすることが多くなりました。インターネットでも、これらを簡単に手に入れることができます。

歯科医院で行う歯石除去

歯石除去で使われる器具(機械)

超音波スケーラー

【特徴】
1秒間に約4万回振動する超音波振動と注水を用いて、歯石を叩いて壊し除去する器具です。

おもに、歯面に大量の歯石がついている場合に使用され手用の器具より効率がよく、時間の短縮になります。また、注水下での使用なので、落とした歯垢、歯石を洗い流す効果もあります。

エアースケーラー 

【特徴】
圧搾空気を利用したエアタービンに装着して使用します。

振動は、1秒間に約6千回と超音波スケーラーより低振動でおだやかなため、痛みが少なく歯面への損傷も少なくなります。ただし、超音波スケーラーより除去時間がやや長くかかってしまうため導入されている歯科医院は一部になります。

超音波スケーラーやエアースケーラーは、手用よりも短い時間で痛みも少ないため、とても万能なように思われるかもしれませんが、手用スケーラーでの仕上げが必要です。

注意点

注水下での使用となるため、鼻呼吸ができない場合には使用できません。

また、心臓にペースメーカーを入れている方など重篤な疾患がある場合、重度の知覚過敏がある場合には、使用できないこともあります。

音や振動に不快感を示す方もいますので、歯科医院で使用される場合には、事前に歯科医師、歯科衛生士に確認してもらうようにしましょう。

歯石除去で使われる器具(手用)

歯石を取るための手用の器具(スケーラー)には、以下の種類があり、用途で使い分けています。形は歯石を取る刃の部分、握る部分、刃と柄を連結している頸の部分が異なります。

シックルスケーラー(縁上)

【特徴】
歯石取りで最も基本的な器具です。おもに歯肉の上に見えている歯石取りに使用します。
刃部の外形は鎌型で、先端に向かうにしたがって細くとがっており、両側に刃がついています。

キュレットスケーラー(縁下)

【特徴】
キュレットスケーラーは、刃先がスプーン状で、先端と背面が丸く処理してあり歯肉の中のみえない縁下歯石取りに使用します。

この形態であるために、狭い歯と歯肉の隙間(歯周ポケット)に器具を挿入しやすく、歯肉も傷つけにくいです。両刃のユニバーサルタイプと片刃のグレーシータイプがありますが、現在では刃が片刃なので、必要以上に歯肉を押し広げず傷つけにくく、深いところにまで届きやすいグレーシータイプがおもに使用されています。
グレーシーキュレットは、それぞれ頸部の角度を変え、特定の部分に適合するよう作られています。

その他歯石除去で使われる器具

プローブ

どんなに健康な歯肉であっても歯と歯肉の境目には正常2,3mmの溝(歯肉溝)があります。

このプローブという器具を用いて、溝の深さを測り歯周病の進行具合を診査します。

歯肉の腫れ等で4㎜以上入った場合は歯周ポケットといわれ、歯周治療が必要と診断されます。

プロービングとは、”針で探る操作“という意味で歯科ではよく使われます。

【特徴】
このプローブで、歯肉の溝を探ることにより、以下のようなことがあります。

①歯肉溝、歯周ポケットの深さ
②出血している(炎症)部位
③歯肉の形態
④歯肉がどのくらい下がっている(退縮している)か
⑤触知することで、歯の根の側面の性状、歯の根の形態

プローブの先端(測定部)は、平板状、棒状、半円状、球状などで、いろいろな間隔で目盛がついています。

探針

むし歯の診査用と歯周診査用があり、エキスプローラーともいわれ、“探り針”です。

【特徴】
ここでは、歯周診査用の探針についてお話します。探針は、歯石取りの術前、術中に、歯石がどこにどんなふうについているか、また術後に歯石がとれたかどうかを確認するために使用します。

作業部の形態は、鈎(かぎ)型になっているもの、作業部全体がやや湾曲しているものなどがありますが、湾曲しているものを使用することが多いです。

デンタルフロス

歯石取り後の、歯と歯の間の清掃や研磨時に使用します。

研磨ブラシ・カップ

歯石取り後の仕上げとして、歯面研磨をします。痛みが伴うことのある歯石取りですが、この歯面研磨により、お口の中の爽快感を得られたり、見た目がきれいになります。

【特徴】
研磨ブラシ・カップは、コントラアングルハンドピースというエンジンに装着し、1分間に4,000~5,000回転くらいの低速、低圧力で使用します。

歯科医院によって使用材料などは違いますが、歯石取り後に残った細かい歯石や歯垢、着色などを取り除き、歯石取りの器具で傷つき粗造になった歯面を滑らかにして、歯石などの再沈着を予防するために行います。最後にフッ化物添加のものを使用することもあります。

歯科医院で行う歯石除去の手順と流れ

検査

歯石取りをするためには、全身の状態などを問診によって確認することが必要です。

その結果によって、超音波スケーラーやエアスケーラーなどの水が出る機械を使えないこともあります。

全身的に歯石取りができる状態であれば、お口の中を見て、歯肉の状態、歯石がどのようについているかなどを検査していきます。セルフケアもどの程度できているかも一緒に確認します。

歯科医院で、歯石取りをするときだけに関わらず、染め出しなどを使用して、歯みがきの状態をチェックされたことがあるのではないかと思います。これは、とても重要なことで、歯みがきがきちんとできない状態で歯石を取っても、歯石はまたすぐついてしまいますし、歯みがきができていない=歯肉が腫れている場合が多いので、そのまま歯石取りをすると、腫れているにきびなどを触るのと一緒で、痛みが生じることが多いのです。

歯科治療が上手くいくかどうかは、“歯みがきが上手くできるかどうか”が一番の重要ポイントとなります。

歯石除去

検査や歯みがきのチェックをして歯石取りができる段階になったら、歯石の状態に合わせて超音波スケーラー、手用スケーラーを選択し、歯石をとっていきます。

まずは、歯肉の上の歯石から取ることが多いです。その後、歯肉の中(歯周ポケット内)にも歯石がついているかを検査して、必要であれば、歯肉の中の歯石を取っていきます。

着いている歯石の量にもよりますが、通常歯肉の中の歯石まで取ると、2~8回ほどかかります。歯石の量が多ければ多いほど、歯周病が重度であればあるほど、回数や期間は多くかかります。

この時に毎日のセルフケアを正しく行い、歯肉の回復力なども早ければ、回数や期間は少し減らせるかもしれません。

再検査

歯は通常、28本(親知らずがすべて生えている場合には32本)あります。歯石を取る前にも診査をしますが、すべての歯の歯石を取ったら、その後も歯石の取り残しがないか、歯肉がどのくらい治ったか、まだ出血があるところはないかなどを再検査します。

この検査はとても重要で、定期健診などで来院された際にも、必要となります。

フロス・歯間ブラシ

歯石がたくさんついている人は、歯と歯の間のお掃除が上手くできていないことが多いです。

歯みがきには、歯ブラシの他に、歯と歯の間を掃除する、フロスや歯間ブラシが必要です。歯並びなどによっては、ポイントブラシなども必要になることもあるでしょう。

歯周病の治療は、歯石を取って終わり!ではなく、その後の家での歯みがきが重要となります。歯石を取って、健康な歯肉を取り戻したら、その健康な状態を維持するために、フロスや歯間ブラシなどの補助的清掃用具をあなたの口の中に合わせて処方してもらいましょう。

歯面研磨

歯石取り後の仕上げとして、歯面研磨をします。

歯石取り後に残った細かい歯石や歯垢、着色などを取り除き、歯石取りの器具で傷つき粗造になった歯面を滑らかにして、歯石などの再沈着を予防するために行います。最後にフッ化物添加のものを使用することもあります。

この歯面研磨により、痛みが伴うことのある歯石取りですが、お口の中の爽快感を得られたり、見た目がきれいになります。

洗浄

歯石取り後は、細かい歯石や歯垢、細菌などがお口の中に残っています。これらの異物や歯面研磨に使用した研磨剤を水で洗浄します。

このとき、スケーラーなどの器具で生じた歯肉の軽度の傷に対して、消毒、歯ぐきを引き締める、の目的で薬剤を塗布することもあります。

歯石除去で出血するのはなぜ?

通常、歯石が着いている場合、歯肉は炎症がおきています。

炎症のサインとして、歯みがきで出血するかどうかもよく聞かれると思いますが、腫れている歯肉は、血管がパンパンに広がり、血管の壁が薄くなっています。歯ブラシや歯石を取る器具が、血管の壁が薄くなった歯肉に触れてこすれると、出血してくるのです。

かすり傷ができたときのことを思い出してみてください。肌は、硬い皮膚に覆われていますが、転んだりして、皮膚が破れ、かすり傷ができると中の薄い粘膜が、外に出た状態になります。

傷がしっかり治っていない状態で、かきむしったりすると、その部分は簡単に出血します。歯肉は、硬い皮膚には覆われておらず、薄い粘膜がむき出しになった状態です。腫れた状態は、かすり傷がある状態と似たような状況なので、その表面をこすると、出血するのです。

歯石取りに、歯みがきが重要な理由はここにも関係があります。歯みがきが上手くなると歯肉の腫れを減らすことができます。腫れが減って、出血が減ると、歯石を取る部位も見やすくなりますし、しっかり見える方が、安全かつ確実に歯石を取ることにもつながります。炎症が強い状態の歯肉では、歯石取りもより痛みが強く感じてしまいます。

ただ歯石をきちんと取らないと、出血を完全に取り去ることは難しいので、歯周病が進行している場合は、痛みを完全に取り去ることはなかなか難しいですが、歯みがきをきちんと行えることは、痛みの軽減やその後の回復にもつながります。いくら週に1度歯科にて歯石を取っても毎日のセルフケアを怠ってしまうと歯肉は改善しません。ぜひ歯科医師、歯科衛生士のアドバイスをもとに一緒にがんばりましょう

歯石除去はなぜ1回で終わらないのか

歯石取りの回数は、着いている歯石の硬さや量、場所によっても変わってきます。

歯石の量が少なければ、1~2回で終了できることもあると思いますが、歯は、通常28本(親知らずがすべて生えていたら32本)あります。また、歯は1本ずつ形が違い、さらに歯肉で覆われている根は、とても複雑な形をしていることもあります。

とくに奥の2本(大臼歯)は、根が2~3股に分かれており、人それぞれ、形が違ったり、長さが違ったりします。

歯肉の中で複雑な根に着いた歯石を、見えない状態で、探り探り、なるべく痛みが出ないように、傷をなるべくつけないように、そして取り残さないように慎重に取らなければいけないのです。そのため、歯石取りには、回数がかかるのです。

定期的に歯科医院での歯石除去を!

歯科医院に行ったことがない、歯石取りをしたことがない場合には、前述したように回数がかかることが多いですが、一度きちんと歯石取りをして、その後、定期的に歯科医院に通っていれば、定期健診は1回で済むことが多いと思います。

なぜ定期健診が必要なのか?

歯みがきが上手にできていれば、必要ないのではないか?歯石はつかないのではないか?と思われるかもしれませんが、最近、よくCMでも見かけるように、ご自身の歯みがきでは、100%完璧に汚れをとることはできないのです。

歯科医師や歯科衛生士、歯科のプロでもそれは同じです。歯石取りが、見えないところを探り探りで、回数がかかることは前述しましたが、ご自身での歯みがきも、すべてが見えた状態で行っているわけではありません。

見えないところを、想像でみがいている部分もあるでしょう。歯並びが悪く、磨きにくい部分もあるでしょう。不器用で、歯ブラシを上手く使えていない人もいるかもしれません。すごく器用な人でも、得意不得意の場所があるものです。

その不得意の磨きにくい場所のフォロー、そこをどうやって磨いたらいいか、の確認が定期的に必要なのです。人間は忘れる生き物なので、どんなに歯みがきに自信があっても、最低半年に1回は、歯科医院に行かれることをおすすめします。

プロにしっかり診査してもらい、歯石のついているところは取ってもらう。定期的に行っておけば、歯石取りに回数がかかることは、ほぼないのではないかと思います。

歯周病やむし歯で治した歯が多ければ多いほど、磨くのが難しいところ、汚れがつきやすいところは多くなっています。治療が終了したら終わり!ではなく、治療を終えたら、次の治療はなるべくしなくても済むように守っていかなければならないのです。そのために欠かせないことは、正しく丁寧な歯みがきと定期健診なのです。

歯科検診について、詳しくは「予防と節約につながる歯科検診は絶対に定期的に行くべき!」をご覧ください。

まとめ

自分で歯石を取ることは歯科衛生士としておすすめはできません。

また、口腔内の汚れを自分ですべて取りきることは難しい為、定期的に歯科医院で検診を受け、プロにしっかり歯石取りをしてもらい、その際に自分に合った正しい歯みがきや自分の不得意な場所を指導してもらうと安心でしょう。

記事監修

小野澤 彰/歯科医師

小野澤 彰

歯科医師・AOBIデンタルクリニック院長

  • 1996年 東京歯科大学卒業
  • 1996~1998年 東京医科歯科大学研修医
  • 1998~2002年 都内歯科医院勤務
  • 2002年4月1日 歯科オノザワ開院
  • 2024年5月1日 AOBIデンタルクリニックに改称

詳細プロフィール

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