睡眠時無呼吸症候群の治療方法に口腔内装置(マウスピース)があるのをご存じですか?
症状、重症度、体型等により治療方法は異なりますが「毎日いびきがうるさい」「呼吸が止まることがある」と指摘されたことがある方は、まずは早めに睡眠時無呼吸症候群の検査を医療機関で受診し、診断をしていただく事をおすすめします。
そのままにしてしまうと、交通事故や生活習慣病など様々なトラブルを引き起こす原因となってしまったり、QOL(生活の質)の低下、経済的損失につながることもあります。
睡眠時無呼吸症候群は早期発見、早期治療がとても大切な病気です。
今回は、眠時無呼吸症候群の治療方法の中で、歯科で行われる口腔内装置(マウスピース)治療について解説します。ぜひ参考にしてください。
この記事のポイント
- 睡眠時無呼吸症候群とはなにかがわかる
- 睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療について
- マウスピースの製作費用がわかる
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)とは
定義
睡眠時無呼吸症候群は「一回10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や呼吸量低下(低呼吸=50%以上の換気低下)が一晩に30回以上、あるいは睡眠一時間に平均5回以上起こる」ことで診断されます。
睡眠時無呼吸症候群は「Sleep Apnea Syndrome」の頭文字から「SAS」と略されます。
いわゆる、睡眠中に呼吸が止まる無呼吸、止まりかける低呼吸を繰り返す病気です。
2003年の山陽新幹線で発生した列車緊急停止事故でSASは有名になりました。
大きないびきがサイン
日常的に大きないびきをかいている、と指摘されたことのある人は注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に喉の空気の通り道である気道が何らかの理由でふさがってしまい、大きないびきをかいてしまったり、呼吸が一時的に止まる状態を繰り返す病気です。
いびきをかく人は中高年男性の4人に一人はいると推定されます。その中で睡眠時無呼吸症候群の人は900万人以上といわれています。近年は健康意識の向上に伴い、検査を受ける方も増えてきました。ですが、まだまだ多くの人が医療機関を受診していないのが現状と思われます。
その理由は、睡眠中の症状なので自覚症状がありません。いびきや呼吸が止まることにより、睡眠が十分にとれず、身体への負担が重なっていきます。
よくみられるケースをしては、同居する家族などの指摘により、ひどい「いびき」をかいていることを知らされ、受診をすすめられることが多いです。
睡眠時無呼吸症候群が及ぼす影響
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は様々な病気に影響を及ぼすと考えられています。
心不全、高血圧、肝機能障害、動脈硬化、慢性腎臓病などの疾病はもとより、交通事故の原因となることもあります。
SASの人は無呼吸がない人と比較し発症率はそれぞれ、
心筋梗塞:6.9倍
心臓突然死:2.6倍
脳卒中:3.3倍
にのぼるという調査結果も報告されています。
睡眠時無呼吸症候群と診断されるまでのプロセス
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、診察は呼吸器科や耳鼻科、その他の専門医療機関で受けることができます。
問診
外来を受診した場合、まず問診を行います。問診時の代表的なものにESS(Epwouth Sleepiness Scale) 眠気度テストがあります。
ESS(Epwouth Sleepiness Scale) 眠気度テスト
得点の合計が5点未満であれば、日中の眠気は少ない。
5点~10点は日中の軽度な眠気あり、11点以上になると日中の重度の眠気ありと判断ができます。睡眠時無呼吸症候群の場合は重症である可能性があります。
問診の結果、SASが疑われたら、睡眠中の呼吸の状態を検査します。
検査
検査の方法はいくつかありますが、その主なものは簡易型のものと精密型のものがあります。自宅でできるものは簡易型でアプノモニターといいます。精密型は専門医療機関にて検査する方法でポリソムノグラフィー(PSG)といいます。
自宅で出来る【アプノモニター】(簡易型)
呼吸器科や耳鼻科、その他の専門医療機関を受診し、機械を自宅へ持ち帰り検査する機械です。
睡眠中の呼吸状態や酸素飽和度を測定します。
これを一晩もしくは二晩検査をしてもらい、機械を病院にもっていき、結果がわかるものです。
医療機関で行う【ポリソムノグラフィー(PSG)】(精密型)
専門医療機関に1泊入院して検査を行います。呼吸の状態や脳波、心電図、いびき、酸素飽和度、寝返り、脚の動きなどさまざな項目の測定ができます。
治療
検査の結果SASと判定されたら治療を開始します。治療方法は「CPAP治療」「マウスピース」「外科治療」となります。代表的な2つをご紹介します。
CPAP(シーパップ)治療
鼻にマスクを通して、小型の機械から気道に圧力をかけた空気を送り込む装置です。一定の圧力をかけた空気を送り込むことにより気道を広げ、無呼吸や低呼吸をなくすことができます。
睡眠中一時間あたりの低呼吸、無呼吸の平均回数(AHI)が20回以上だと保険適応となります。(専門医療機関にて貸し出し、毎月の外来診療が義務)
CPAP治療で無呼吸やいびきが軽減し、昼間の眠気、だるさなどの症状が改善します。
※AirMiniとAirSense10(レスメドResMed社製)
マウスピース治療
呼吸器科や耳鼻科、その他の専門医療機関などの紹介状があれば、保険適応のマウスピースを作成することができます。SAS専門の歯科医院で診察してもらってください。
歯科医院では口腔内の状況やレントゲンなどで確認してもらい、マウスピースの作成ができるのであれば、型取りをします。出来上がったマウスピースは睡眠時に装着します。
睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療とは
日本人は骨格上「無呼吸体質」!?
睡眠時無呼吸症候群は肥満の方がなりやすい印象をお持ちかもしれませんが、実は日本人は骨格的に下顎が小さいので痩せていてもSASになりやすいといわれています。
SASの無呼吸や低呼吸の大半は空気の通り道である気道が狭くなったり、完全に塞がったりして起こります。
気道の内腔は直径が1.5㎝ほどしかないので、仰向けだと重力で喉の筋肉や舌が垂れ下がり、気道が完全に閉塞するきっかけとなります。
さらに肥満になると気道にも脂肪が溜まって内腔が狭くなり、SASのリスクが上がってしまいます。
SASはマウスピース治療で改善できる
マウスピース治療は上下の歯に入れ、下顎を前方に出して気道を広げ、その位置を固定する装置です。
痩せ型で小顎の方や軽症~中症の方には効果があります。重症の方も使用できます。また、旅行や出張など持ち運びに便利です。
不快感や身体への負担が少なく、CPAPをうまく使えない人にも最適です。
どこで作れるのか
①専門医療機関からの紹介の連携歯科医院
②日本睡眠歯科学会に所属する歯科医師、もしくは専門医、経験を積んだ歯科医師
睡眠歯科医・医療機関はこちらからお調べいただけます【日本睡眠歯科学会】
◎医科・歯科連携の流れ
マウスピースの製作費用
保険適用ありの固定型タイプ
保険適応のマウスピースは固定型タイプで上下一体型で費用は2万円弱です。
ただし、医師により睡眠時無呼吸症候群の診断及び紹介が必要です。
マウスピースは一体型の為、微調整が難しく、夜中にせき込む方や鼻がつまる方には不向きです。
保険が適用されない上下分離型(自費治療)
医師の診断や紹介がなくても歯科医院でマウスピースを作成できます。
上下分離型でソムノデントといい、種類は2種類あります。
ソムノデント フレックス(約16~19万円)
ソムノデント アヴァント(約17~20万円)
固定タイプと分離型タイプの長所・短所
■固定型タイプ(上下一体型)(保険対応)
【長所】
保険適応なので作製費用が安価です。
【短所】
・下顎の位置を前後・左右など細かく微調整が出来ません。
・あごが固定して動かす事が出来ない為、使用時に不快感やあご関節を痛める場合があります。
・唾液が多量に出てうまく飲み込めない為、唾液が口から溢れてしまう事があります。
・睡眠中に咳こんでしまったり、鼻がつまっていると使用が困難です。
■分離型タイプ(ソムノデント フレックス)(自費)
【長所】
・装着したままで口の開け閉めが可能です。
・装置を装着した状態で“せき”や“くしゃみ”ができ、水も飲めます。
・下顎の位置を前後に調整が可能です。(上顎スクリューで調節)
・装置の内部にソフトな素材を採用しているためフィット感が良く脱着も簡便です。
・独自に開発されたウイング形式で下顎の位置が維持されます。
・上下のプレートが完全に分離しているので、装着の着脱を上下別々に行うことができ簡便です。
・耐久性に優れており装置の保証が36ヶ月付いています。
【短所】
保険適応外なので費用が高額になります。
■分離型タイプ(ソムノデント アヴァント)(自費)
【長所】
・従来型のフレックスと同様に装着したままで口の開け閉めが可能で、“せき”や“くしゃみ”がで
き、水も飲めます。
・装置の内部にソフトな素材を採用しているためフィット感が良く脱着も簡便です。
・耐久性に優れており装置の保証が36ヶ月付いています。
・デジタルデータを用い患者様の歯型に合わせ材料を削り出す、新しい手法で制作します。(CAD/CAM)
・従来型のフレックスと比べて強度20%以上、サイズ335小型化が実現しています。
・従来型のフレックスと比べ、左右の動きにより自由度が増しています。
・長さが異なる専用のストラップを付け変えることが下顎の位置を調整します。
【短所】
保険適応外なので費用が高額になります。
マウスピース作製の流れ
歯の状態をチェックをします
口の中でマウスピースの維持ができるか、歯や歯肉状態を確認し、正確な型や歯の安定を図ることができるかを診断します。
虫歯がある場合や歯石がある場合は先に歯の治療やクリーニングが必要になります。
その後、歯型をとって治療に最適な顎の位置を設定し、それに基づいてマウスピースを作製していきます。
問題がなければ、受診2回目でマウスピース完成
装着の方法、お手入れの仕方など、使い方の指導を受けて実際に使用していただきます。
使用状況をチェック
使いはじめて1ヶ月後に歯科を受診し、違和感などなく朝までつけていられたかなど確認します。マウスピースが当たって痛いとか違和感があるところをチェックし、調整します。
いびき、無呼吸などの改善が見られたかどうかもチェックします。
調整
マウスピース装着した状態でSASの検査を受けて、治療効果を確認、検査結果によっては調整を行います。
定期健診
マウスピース使用した場合は、数か月おきに歯のチェックをしてもらう必要があります。
装着時の痛みや違和感がないかとか、マウスピースの劣化・効果などを確認します。
まとめ
人生の1/3は睡眠時間といわれます。睡眠時無呼吸症候群の治療には質のいい睡眠が大切です。
減量、減酒、禁煙、習慣的な運動など、スムーズな入眠のためには生活改善が必要です。
質のいい睡眠を取ることは、疾病の予防にもなり、医療費削減、アンチエイジングにもつながります。
健康のすべては、快眠から始まるといえるでしょう。